マイケル・ポーランのインタビュー:求められる食の運動とは?

ジャーナリストでベストセラー作家のマイケル・ポーラン教授のインタビュー、とっても示唆に富む。敗北に終わったカリフォルニア州での遺伝子組み換え表示住民投票の意味から、食の運動のあり方まで短いインタビューで語ってくれる(インタビューされたの住民投票の前。日本語字幕付き。Democracy Now!)
http://democracynow.jp/video/20121024-2
http://democracynow.jp/video/20121024-3

彼が語るエピソードがおもしろすぎる。

  • モンサントは共和党も民主党も買収して米国議会で遺伝子組み換えについて議論させず(そう。南米ではアルゼンチンでも議論なく承認され、その後、パラグアイやブラジルには密輸で既成事実化された。こうして南北米大陸が遺伝子組み換え大陸となってしまった[もっともペルー、エクアドル、ベネズエラ、ボリビアでは禁止、あるいは規制しようとしている])。
  • ニューヨーク市長はペプシと正面から闘った。なぜか? ペプシの飲み過ぎで2型糖尿病が増える。その支出が市の財政を圧迫する。だから、ペプシを規制しようとした。瓶のサイズを変えることで規制が可能…。
  • オバマは遺伝子組み換えの食品表示をすると選挙公約して、当選後、モンサント支援に鞍替えする。オバマは食品産業の持つ問題をよく理解していた。ただ、それと闘う術を持っていないで闘おうとした(選挙公約だけ)。

食の運動は環境運動に比べて40年遅れている、と彼は言う。

食料産業は消費者と生産者を分断して、加工食品のプロセスをブラックボックスにする。遺伝子組み換えのモノカルチャーで先住民族や小農民を追い詰め、工場式畜産で安い肉をばらまき、その情報は政府を買収して隠す。

モノカルチャーは農村における職を奪い、食の自由を奪う。

それに対して食の運動が必要だ。

政治に絶望し、地域での有機農業に走る人びともいる。マイケル・ポーランが危惧するのは食の階層化が生み出されることだ。健康で安全な食を得られる人と、工業化された食品産業が作る危険で安い食を食べる人との二分化。食の自由を奪う政治を変える動きを起こすことで、社会全体によびかけていくことの必要性を彼は訴える。

この食の運動は職の運動でもあるだろう。職を取り戻し、そして環境と健康を取り戻す。そして社会の階層化を許さない政治的な動きと連動していくのだ。

残念ながら彼の言うようにこの領域は米国では40年遅れているらしい。しかし、40年遅れているのは米国だけでなく、ブラジルも同様だ。革新的な左翼政党であったはずのブラジル労働者党はこの分野では保守勢力と区別がつかない(もちろん小農民を支援する労働者党議員はいるのだが、党としての政策になりえていない)。保守勢力とほとんど闘わずして、アグリビジネスにブラジルをほぼ制覇させてしまった。

犠牲となった側に立つ政治勢力は今なおブラジルにもはっきりとは見えてこない。

さて、日本。日本は世界に誇るべき産直運動、生協運動がありながら、それが大きな政治運動にはなっていない。その中で遺伝子組み換えはマスコミもまったく報じない中、続々と承認される。アグリビジネスの利益に反する情報がマスコミに流れない。その点、日本もまたこの領域において大きな遅れをとっている。若い人の少なからぬ人たちは加工食品、格安の牛丼やハンバーガーばかりを食べている。

そんな中でますます食品企業は独占を強め、人びとは食の自由を失う。われわれの食は地球の裏の先住民族や小農民を追い詰める。飢餓・貧困と汚染の悪循環。そうではない別の道があるはずだ。日本で、米国で、南米で、食と職を作り出す国際的なリンクができるはず。アグリビジネスが描く流れでない食と職を作り出せば、この流れとは違う確かな動きが作れるはず。

反原発の旗印はようやく見えてきたかもしれないけど、同時に食と職の運動を担う政治勢力は生まれてきただろうか?

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