急ピッチで進む「ゲノム編集」魚流通に向けた調査会

 日本政府が「ゲノム編集」食品の普及に躍起となっている。政府が戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)で税金をつぎ込んでその開発をプッシュした「ゲノム編集」トマトの種苗の一般市民への配布が始まろうとしている。次に目論むのが「ゲノム編集」魚なのか、厚労省は2月10日に最初の調査会を開いたと思ったら、3月17日は3回目がすでに行われている(1)。なぜ、こんな急ピッチなのか? その内容も前の投稿のようにとんでもない内容のもの。こんな形式的な調査だけで日本で「ゲノム編集」魚を流通させようというのだろうか? “急ピッチで進む「ゲノム編集」魚流通に向けた調査会” の続きを読む

「みどりの食料システム戦略」とRNA農薬

 2050年までに有機農業を25%にするという目標を日本政府は立てた。「みどりの食料システム戦略」である(1)。有機農業の目標を立てたことは重要。もっと押し上げなければならない。しかし、この戦略には2つの大問題が隠されている。
 1つは化学農薬や化学肥料による農業からバイオテクノロジー、遺伝子操作技術による農業に転換しかねないこと、もう1つは日本だけ市場原理主義になっていること。
 気候変動の激化だけでなく、生態系の崩壊が急速に進んでおり、有機農業・アグロエコロジーを急速に転換することは今後、不可欠であり、不可避の政策にならざるをえない。今回の戦略はその危機を利用して、この転換期を化学農業から有機農業・アグロエコロジーへの転換ではなく、バイオテクノロジー農業への転換に使おうとしている。まず、それが最初の大問題。詳しく見たい。
 
 2050年までに化学農薬の使用量50%削減目標。世界で日本だけが規制緩和を続けてきたネオニコチノイド系農薬を転換させるという。大転換だ。いいことのように見えるが、但し書きに注目。「リスク換算で50%」、つまり「安全な」農薬を開発して、それに移行させればいいことになる。でも果たして安全な農薬は存在しうるか? その新規農薬とは何なのか? それはRNA農薬。 “「みどりの食料システム戦略」とRNA農薬” の続きを読む

国連食料システムサミット:多国籍企業による国連乗っ取り

 国連を多国籍企業がジャックする? 今年はかつてないほど食のシステムをめぐる激突の年にならざるをえないだろう。忘れないでほしいのはこの流れを作り出している底流は世界の有機農業・アグロエコロジーの実現をめざす動きであること。それは世界大に広がり、市場も各国政府の政策も変えつつある。これに脅威を感じて反撃を始めているのが化学企業/遺伝子組み換え企業。市民の力は大きいのだ。
 モンサント(現バイエル)や住友化学が作るCropLifeがFAOにすり寄ることに成功したことを先日報告した(1)が、こうした動きはこれに留まらない。今年9月に国連は食料システムサミットの開催を予定している(2)が、その責任者に担当されたのはなんとビル・ゲイツ財団が設立したアフリカ緑の革命同盟(Alliance for a Green Revolution in Africa、 Agra)の代表。アフリカの農民から種子を奪って、遺伝子組み換え種子や農薬・化学肥料を押しつけるための組織と言っていいだろう。そして、その発表されたサミットのコンセプトペーパーには精密農業、メガデータ、遺伝子組み換え技術、多国籍企業が売り込みをかけている言葉が並ぶ(3)。 “国連食料システムサミット:多国籍企業による国連乗っ取り” の続きを読む

「ゲノム編集」神話と現実

 「ゲノム編集」による遺伝子操作について、日本語圏では推進派の情報が大量に流されている。「ゲノム編集」はその中心的技術であるCRISPR-Cas9がノーベル化学賞を取るなど、遺伝子の機能を探求するためには画期的な技術であることは疑えないが、それを使って農作物や家畜を作るというのはとんでもない短絡である。にも関わらず、それが画期的な品種改良方法であるかのような情報がマスコミや高校などでも使われており、大いに懸念せざるをえない。
 そんな中で「ゲノム編集」とはどんな技術で、食に適用をすればどんな問題が起きるか、欧州議会のGreens/European Free Allianceが60ページ超のわかりやすいガイドブック『ゲノム編集−神話と現実』をまとめた。全文無料でダウンロードできる。 “「ゲノム編集」神話と現実” の続きを読む

「ゲノム編集」飼料での後代交配種のパブコメ

 またパブリックコメント、しかもひどいパブコメなので意気消沈、読む気もしないと言われるかもしれないけれども、書かざるを得ない。日本政府は2019年10月に「ゲノム編集」農作物を実質的に申請・承認プロセスを経ずに、安全性の検査もないまま、「同断・届け出」という奇妙な仕組みを作って、表示などの規制もせずに生産・流通させることを認めた。
 もっとも問題なのは、最初の「ゲノム編集」種苗は相談・届け出を求めるけれども、その種苗を親として交配させた後代交配種(つまり「ゲノム編集」種苗の品種同士、あるいは「ゲノム編集」種苗と従来の種苗とかけ合わせてつくった子の種苗)は届け出しなくていいとしたことだ。
 届け出すらしないのだからもう規制も不可能になる。従来の作物とまったく区分ができなくなってしまう。そうすれば反対すらできないだろう、というバイオテクノロジー企業の悪知恵をそのまま受け入れたわけだ。

 しかし、それを飼料に使う場合についてはパブコメで批判が殺到し、農水省も後代交配種でも形質が変化した場合など一定の条件の場合は届け出が必要とすることに昨年2月に方針転換した。でもその方針が使われることは一度もないまま(1)、早くも農水省はさらに方針転換して、その決定を反故にして、後代交配種は一切届け出不要に変えるとしたのだ。それが3月5日に締め切りとなるパブコメで示された方針なのだ。あまりに異例の朝令暮改的迷走だろう。よほどバイオテクノロジー企業から圧力を受けたのだろう。
 怒って当たり前のことをやっているのだけど、マスコミは報道しない。そんな中、粛々とバイオテクノロジー企業のための政治がまた進もうとしている。でも、黙ってられないから、以下のコメントを送る(2)。 “「ゲノム編集」飼料での後代交配種のパブコメ” の続きを読む

国連を乗っ取ろうとする多国籍企業

 世界が有機農業・アグロエコロジーの方向に向かっていることは間違いない。ここ20年近い間に有機市場は5.5倍近い急拡大をしているだけでなく、国連FAOも生態系を守る農業アグロエコロジーの普及を2013年から掲げており、ラテンアメリカ、アフリカ、そしてフランスや英国各国などでもアグロエコロジーを政策に取り込み始め、農薬や化学肥料の使用の規制も始まっている。農薬・化学肥料は生物の絶滅、土壌の劣化・損失や気候変動を激化させる原因としても注目され、大幅に減少させることが国際的に求められる状況になってきた。
 農薬、化学肥料、遺伝子組み換え種子を手掛けるアグリビジネスにとって、大きな敗北は2010年以降、国連までもがアグロエコロジー推進に進んでいったことだろう。しかし、彼らは黙って歴史の舞台から下がろうとしてはいない。それどころか、今、国連FAOを乗っ取るばかりの勢いでロビーを重ねている。 “国連を乗っ取ろうとする多国籍企業” の続きを読む

バイオテクノロジー企業の言いなりの日本政府

 「ゲノム編集」作物の飼料としての取り扱いに関するパブリックコメント(既報)の締め切り(3月5日)が迫ってきている(1)。
 今回のパブコメについては2月4日にまとめているのでそれを参照していただくとして(2)、今回のポイントは以下
・ 日本政府は「ゲノム編集」された作物を親として交配させた品種(後代交配種)は届け出すら不要としている
・ 飼料としてそうした作物を用いることに対して行われた2019年9月開始のパブリックコメントに批判が殺到→農水省は2020年2月7日に後代交配種で一定の変化が出たものは届け出を求める方針を出す(3)
・ パブコメを受けて変更した政策を今回のパブコメではひっくり返し、後代交配種の届け出を一切不要とするもの “バイオテクノロジー企業の言いなりの日本政府” の続きを読む

「ゲノム編集」食品ボイコットに向けた動き

 本当に今、目を覚まさないと。大事な分かれ道が目の前にある。目もくらむような変化が起きようとしている。どんな変化か?
 Covid-19の蔓延で世界が苦しむ中、有機農業・アグロエコロジーの発展はめざましい。英国では2020年12.6%も有機市場が拡大したという(1)。米国ではなんと14パーセント(2)。新型コロナウイルスの出現は消費者の行動をも大きく変えつつある。
 2018年にフランスのシンクタンクIDDRIは2050年のヨーロッパの農業と食のあるべき姿を提示した。アグロエコロジー、生態系の原則に基づく農業に転換させることで化学物質の投入を段階的になくして、土壌や微生物を守りながら、増加する人口を健康な栄養で支え、慢性疾患にも対応できるというものだ。2050年にはこの100年間近く、世界を苦しめた化学物質にはもう頼らない時代にできるのかもしれない。そのために今、やるべきことが検討されている(3)。気候変動も和らぎ、生物大量絶滅というシナリオも変えられるのかもしれない。次の世代への大きな希望が見えてくる。
 しかし、もう1つの恐ろしい道が大きな口を開けて構えており、わたしたちを呑み込もうとしている。それはBrexitでEUを離脱した英国で鮮明に現れている。EUの厳しい遺伝子組み換え規制からも離脱しようというのだ。 “「ゲノム編集」食品ボイコットに向けた動き” の続きを読む