超加工食品を規制するグローバルな取り組みを!

 近年、気候危機問題は食が主要な要因であることはもう誰の目にも否定できなくなってきた。最近の国連の気候変動問題の国際会議COPではますます食が引き起こす気候変動に議論が向けられ、食のCOPと呼ばれるようになってきた。工業型農業とそれを利用した超加工食品が気候危機を加速している。それだけにそうした食の推進企業もロビー活動に力を割くようになった。COP30(第30回気候変動枠組条約締約国会議)にロビー活動団を送り込んだ巨大アグリビジネス企業の数は300社を超えて、過去最高を更新した¹。ネスレ、コカコーラ、PepsiCo、モンサントを買収したバイエル、化学肥料のYaraは積極的に動いている。高利潤を生む分野を守ろうということなのだろう。
 こうした食が加速するのは気候危機だけではない。世界大で健康被害をもたらしており、すでに関連を指摘する論文は山のように出されている²。このような健康被害に対して世界が動き出している。規制に向けて、いち早く動き出したのがブラジルを初めとするラテンアメリカ諸国。そして米国でも超加工食品を排除するための新たな表示ラベルが提案されている。そのことについては以前まとめたので、それを参照していただきたい³。残念ながら、日本政府はこのような動きにもっとも消極的である。ここでも日本は化石賞に値するかもしれない。
 でも、これらの企業は膨大な富を集積しており、政府の政策を左右する力を持っている。それらの企業の関係を分析して描いたのが添付した論文の図だ。日本企業も少なくとも8社ほど社名と思われる文字が見える。
 
 これらの企業は国際的に連携して動いており、気候対策や健康対策が各国で進まないように各国政府に強い力を発揮している。すでに日本でもまさに御用学者や御用ジャーナリストがこの超加工食品への規制をさせないための記事をこのところ多数出している。
 その被害者は食を選べない貧困層に集中している。この情報撹乱によって日本では超加工食品規制は進まないどころか、むしろ政府は推進している。
 
 この問題を掘り下げた論文がLANCETに掲載された。この超加工食品をめぐる問題をものの見事に分析しており、熟読に値する⁴。
 気候危機、健康危機の同時進行を阻むためには国際的な政治課題として、全社会で取り組む必要があることをこの論文は訴えている。超加工食品に関する行動のためのグローバルネットワークが必要とされている。
 
 この論文は貴重な指摘に満ちているが、その中でも特に重要なメッセージが発せられているので、ここで引用しておきたい。

  • 人間の食生活における超加工食品(UPF)の増加は、ほぼあらゆる場所の食品システムにおけるUPF業界の経済的および政治的な力の増大によって引き起こされており、個人の意志力や責任感の欠如によるものではありません。
  • UPF の生産は他の種類の食品に比べて収益性が高いため、この産業の拡大を理解する鍵となります。資本主義経済では、最も収益性の高い企業や部門に資源と投資が集中し、これが食品システム全体を超加工食品に向けて構造的変革を促進します。
  • 業界をリードする企業は、ここ数十年で成長とグローバル化を遂げ、特に低所得国および中所得国においてUPF市場を積極的に拡大してきました。強力なマーケティング手法を用いて需要を喚起し、消費を引き起こしています。また、政府の規制を阻止し、反対勢力を抑圧するための政治戦略も展開され、成長の継続を確実なものにしています。
  • この政治活動は、企業利益団体の世界的なネットワークを通じて国境を越えて調整されており、ロビー活動、政治献金、訴訟、企業を優遇した統治モデル、市民社会を手なずけ、議論の枠組み作り、証拠の生成、科学的な疑念の創出(つまり、企業のアイデア)などが含まれます。
  • 食品システムにおける業界の力を減らすには、UPF 生産の意欲を強く削ぎ、マーケティングの力を減らし、他の種類の食品生産者に資源を再分配し、UPF 業界を食品ガバナンスから除外し、企業活動への依存を終わらせ、企業の干渉を最小限に抑えるために政策、医療専門家、科学的実践を改革する必要があります。
  • UPFの低い食事への移行は公正なものでなければならず、参加型ガバナンス、経済的包摂、家族支援を通じて持続可能な食料システムを促進する政策に根ざし、食料安全保障と男女平等を促進し、偏見を最小限に抑える活動を確実に行う必要があります。
  • 行動を加速させるために、UPF(超加工食品)は地球規模の健康問題として優先的に取り組むべき課題です。地球規模の健康目標は、超加工食品の食習慣が始まったばかりの国ではその増加を阻止し、あらゆる場所で増加を食い止め、既にそのような食習慣が主流となっている地域では、持続可能な食料システムを促進するための幅広い取り組みと連携しながら、UPFの削減を加速することです。
  • 世界的な公衆衛生対策を動員するための戦略としては、行動を調整するための世界的なUPF行動ネットワークの構築、そして政治的アドボカシー、コミュニケーション、訴訟、そして研究に取り組むための強力で十分な資源を備えた各国連合の構築などが挙げられます。特にラテンアメリカとサハラ以南のアフリカにおける最近のアドボカシー活動と政策的勝利は、他の地域への活動拡大に向けた重要な教訓となります。

以上

(1) More than 300 big agriculture lobbyists have taken part in Cop30, investigation finds
https://www.theguardian.com/environment/2025/nov/18/big-agriculture-lobbyists-cop30-climate-summit

(2) LANCETの論文で超加工食品に関わる論文一覧
https://www.thelancet.com/action/doSearch?type=quicksearch&text1=ultra+processed+food+series&field1=AllField

(3) 10月14日にまとめた投稿

超加工食品への取り組みが世界で進行中

(4) Towards unified global action on ultra-processed foods: understanding commercial determinants, countering corporate power, and mobilising a public health response
https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(25)01567-3/fulltext

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA