重イオンビーム放射線育種米への転換を進める動機として、カドミウム汚染がある。カドミウム汚染対策は万策尽きて、重イオンビーム放射線育種品種に頼るしかない、ということなのか、調べていくと、そうではないことがわかる。海外での研究でも有機堆肥を活用することの有用性が確認されている。その実証研究が日本でも行われていて、土壌改良材を用いることで劇的に下がることがわかった。そして、その土壌改良材を用いた水田で作ったお米が食味コンクールで金賞を受賞した。うまくて安全、というのはこの上ないことではないか。しかも重イオンビーム放射線育種など使っていない。
この研究をされたのは群馬大学の板橋英之教授。世界で最大のカドミウム汚染国は中国で日本の総面積の倍以上が重金属汚染されている。その中国と日本のカドミウム汚染地域で土壌改良材を使ってカドミウムの吸収を下げる実証試験を行った。使った土壌改良材は杉の樹皮(バーク)を発酵させたもの。杉の樹皮は多くの地域の中で調達できる。地域内の資源を使って、発酵した土地改良材を水田に播くと、カドミウム濃度が検出されなくなる。でもカドミウムは自然の元素で消えることはない。何が起きたのかというと、この土壌改良材にカドミウムが吸着されてしまった結果、カドミウムが検出できなくなったと考えられる。この状態の水田や畑で作物を育てても、カドミウムは植物にほとんど移行しない。
しかも、うれしいオマケがある。というのも収穫はむしろ増え、食味も良くなっているというのだ。米・食味分析鑑定コンクール国際大会での受賞はその実証と言えるかもしれない。もちろん、どんな条件でも有効かどうかさらに試験は必要になるだろうか、今後、カドミウム汚染で苦しむ地域にとってはとても有効な選択肢になるのではないか。
可能な限り、カドミウムを隔離した上で、それでも残るカドミウムに対してはこのような土壌改良材(有機資材といっていいだろう)を使うことで、作物にカドミウムを移行させないというのは有効な方法になるだろう。
さらに、この土壌改良材を使うことで、地域の林業、土壌改良材を作る施設など、地域経済に与える好影響も期待できるだろう。外の地域に依存するのではなく、循環型で維持可能な方法で、汚染の影響を封じ込め、収穫も増え、味もよくなり、というのは本当に一石何鳥になるんだか。秋田県だけでなく、重イオンビーム放射線育種米の導入を検討している地方自治体はこの方法をぜひ検討してほしいものだ。
果たして、このような研究を農水省・農研機構はやってこなかったのか、というとさまざまな土壌改良材を試してはいる。でも、その研究がいつの間にか見えなくなった。2018年に重イオンビーム放射線育種米一本足打法を決めてから、こうした研究にも資金が回らなくなったのかもしれない。
重イオンビーム放射線育種米のことを小手先の技術によるごまかし策、と言い続けているが、結局、一つの問題を解決すると称して、別の問題を作り出してしまう。結局、永遠に解決が見えてこない。遺伝子を壊すことでマンガン不足になり、収穫減少、病気に弱くなる、暑さに弱くなる、さらにはその遺伝子が潜性であり、維持が困難。もっと大きな問題を将来に招くかもしれない。そんな小手先の技術に頼るのではなく、もっといい方法があるのだから方針転換が必要だろう。
今からでも政策を転換すべきだ。
ちなみにこの方法は水銀汚染にも一定効果があるという。セシウムにも効果はあるだろうか、気になるところ。PFASは重金属ではないので、同じ方法は通じないかもしれないが。
もちろん、その前に汚染させない、汚染した主体に責任を取らせることが不可欠。その政策が日本では消えかかっている。汚染企業が免罪され、負担はみなわれわれ市民に押しつけられる。こちらの方の政策転換も不可欠だ。
群馬・沼田の良食味米、土壌改良材で「金賞」 群馬大開発
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCC164390W4A211C2000000/
板橋教授の研究成果
https://kaken.nii.ac.jp/en/file/KAKENHI-PROJECT-17H04482/17H04482seika.pdf PDF
安心安全を追究した天然由来土壌改良材「GUDアグリ」を使った極上のお米『ぐっどまい』
https://gudi.co.jp/gudmai/
土壌改良剤でカドミウム対策が可能という今回の情報の他に、確かポッカリという品種はカドミウムを吸わないためカドミウム対策になるともされていたかと思います。
(そもそもカドミウム汚染は減ってきたようですが)日本は、なぜか重イオンビームを使いたがる、対策という名の人体実験にもなりうる恐ろしい事ですし、何より自然に手を出してはいけないと思います。
遺伝子に手を出す前に、この記事の内容のように自然の力を借りて対策すべきですよね。
私達が自然界に生きる一部の生き物だと自覚しなければいけないと思います。
何よりあきたこまちR問題をメディアで伝えるべきです!