種苗法改正の背景にある多国籍アグリビジネスの思惑を考えれば、種苗法改正の論議に乗ることはできない。一方で、今、日本の地域の中で、育種農家の方たちが困難にぶつかっていることも無視できない現実だろう。
育種家とは新品種の育成を手掛ける方たちのこと。中でも、農家として育種を続けておられる農家の方たちがいる。その方たちがいなくなってしまえば、それこそ企業だけの種苗になってしまう。だからその点で、そうした人たちの活動を守ることも重要であることは間違いない。
日本の地域で育種が困難になる背景にある最大のものは減りつつある農家の数だろう。買う人が減っていけば新品種を作っていくことも難しくなる。自由貿易協定で安い外国農産物が入り込み、その競争を強いられる農家にさらに負荷を増やす形になれば、結局、購買力は大きくならない。
だから、そうした育種をされる方たちをもいっしょに底上げできるような政策が必要になっていくのではないだろうか?
具体的にどうすれば実現できるか? 地域で育苗される農家、農家のために種苗を増殖するタネ採り農家への支援策を具体化することだと思う。そして日本の地域でタネから採られた農産物を生かす地域の食の政策を作り直し、地域の農業を底上げすることではないか?
種苗法改正したところで、将来的な展望が作れるかというとむしろ大変になるだろう。農政がこのままであれば、農家の数はさらに減るだろうし、さらに外国企業との競合にも曝されていくだろうし、日本政府は輸出で儲けるというのだが、ポスト・コロナ、気候変動激化する中で、決して展望は明るくない。なにせ、アジアの農業は年々パワフルになっていっている。
それに対して、国内で回っていく仕組みを作ることは十分可能。なにせ自給率は38%しかない。地域によっては数パーセントしか自給率は存在していない(東京、大阪は1%)。そして日本に適した素材は山ほどある。伸びしろはあまりに大きいのだ。そちらを消費者と結びついて開拓していく道こそ、育種家と種苗を使う農家と消費者のWin-Win-Winになるのではないだろうか?