映画『世界が食べられなくなる日』

映画『世界が食べられなくなる日』映画『世界が食べられなくなる日』Facebookページ)UPLINKで公開前に見させていただいた。

私的なことになるが、ここ数年、ブラジルを中心に南米からの情報を毎日読んでいるのだが、目を疑うような情報ばかりだった。遺伝子組み換えが急速に広がり、まるで戦争が起きているような状態が伝わってきていた。その中で日本に起こった東電福島原発事故。放射能汚染により危惧される症状、そして地球の裏で進行する遺伝子組み換えと農薬により引き起こされる症状、それらはあまりに似通っていた。あたかも地球の裏と表で同時進行する1つのことのように思えた。

2011年3月の原発以降、何をすべきか、いつも問い詰められている。まずは原発問題でできることに集中すべきと考えた。遺伝子組み換え問題はしばらく封印して原発問題に集中すべきなのではと考えた。人間が処理できる情報量には限界がある。その中で原発以外の問題を語ることで原発問題(あるいは核サイクルの問題)の解決を遠ざけてしまうという懸念も感じた。今なおその迷いがまったくないわけではない。

しかし、一方で遺伝子組み換えの問題はしばらく棚上げしておける問題ではない。すさまじい勢いで北米から南米に広がり、今やアフリカに植え付けられようとしている。アジア太平洋地域でもオーストラリア、インド、フィリピンなどでの問題は深刻化しつつある。

さらには遺伝子組み換えに伴う農薬使用の激増に加え、枯れ葉剤耐性遺伝子組み換え、ジカンバ耐性大豆などさらに従来のモンサントの開発した農薬グリフォサート(ラウンドアップ)よりも毒性が強いと批判される農薬を使う遺伝子組み換えトウモロコシなども出てくる状況。よりいっそうの汚染が進みつつあり、ベトナム戦争の世界化を危惧せざるをえない状況だ。そして、日本は世界最大の遺伝子組み換え作物輸入国であり、遺伝子組み換えナタネの花粉による汚染も深刻になりつつある。日本のマスコミはこの問題に関しては原発の311前と同じ状況、ほとんど何も語らないに近い。

結局、原発問題も遺伝子組み換え問題もまったなしに追い詰められている状況であることをあらためて感じざるをえず、自分の持てる力のかなりの部分は南米の遺伝子組み換え問題の状況を追うのに使っている。

そして今日の見た映画『世界が食べられなくなる日』。ここでは福島の原発事故と遺伝子組み換えが1つの問題として取り上げられている。

自分でも何年も追ってきた問題でかなりの映像にも目を通しているのに、衝撃を受けるシーンは多々あった。公開前なのだからその内容を紹介してしまうようなことは避けるが、フランスの港湾労働者に起きている健康被害には絶句した。なぜ港湾労働者まで。

フランスでの核問題の深刻さも語られる。チェルノブイリ事故の後遺症の苦しみも語られる。そして日本。フランス人の目で見た福島原発事故、なぜ逃げないのか、という問いに福島の人びとの語る言葉に涙するフランス人。この映画が世界で、そして日本で放映されることに救いを感じた。

世界は絶望的なのか? 映画で描かれるセネガルのアグロエコロジーの実践。そこに希望の光が見える。アグロエコロジーは南米でもアグリビジネスの強制する遺伝子組み換え巨大農業に対するオルタナティブとして注目され急速に広がっている一つの運動であり、社会システムである。

セネガルの民衆が叩く太鼓、そして日本の太鼓、その音が響き合う中で、未来への希望が見いだせるか。核問題も遺伝子組み換え問題もまったなしの中で、そのことを考えさせられた。

多くの人に見てもらいたい。上映予定のない地域でもぜひ自主上映を企画してもらいたいドキュメンタリーだ。

2013年6月8日(土)渋谷アップリンクほか、全国順次公開!http://www.uplink.co.jp/sekatabe/

もし6月を待てないという場合、そしてまだ『モンサントの不自然な食べもの』を見ていないというならば、今、UPLINKで見ることができるのでぜひ見てほしい。UPLINK:『モンサントの不自然な食べもの』http://www.uplink.co.jp/monsanto/

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