ブラジルでジカンバ耐性GM大豆の栽培? メキシコでは最高裁を無視

 大豆に関して厳しい話しを2つほど。どちらも問題はモンサント。モンサントはブラジルでジカンバ耐性の遺伝子組み換え大豆の栽培開始を射程に入れた、という話し。もう1つはモンサントはメキシコの最高裁にユカタン半島での遺伝子組み換え大豆の栽培を禁止される判決を受けたのだけど、それを無視してGM大豆の販売を続け、その結果、ユカタン半島で養蜂業を営む先住民族は採集した蜂蜜に遺伝子組み換え花粉が混じり、ヨーロッパでの市場を失ってしまっているという話し。

 前者中心に書くが、ジカンバ耐性遺伝子組み換え大豆とはこれまでのモンサントの除草剤ラウンドアップ(グリホサート)が効力を失ってきたことを受けて、モンサントがラウンドアップにジカンバという古い除草剤を混合させて、その剥がれ落ちたメッキを繕うというものだ。しかし、このジカンバという除草剤は周囲に流出しやすく、関係ない畑や周辺の森林などにも影響を与えてしまうことが懸念されていた。その懸念を無視して、モンサントはジカンバ耐性遺伝子組み換え大豆の販売を米国で始めてしまう。米国環境保護局がその混合農薬の使用許可を出す前に。

 その結果、360万エーカーという広大な農地で被害が出ており、モンサントに対する集団訴訟の騒ぎになっている。おそろしいのはこのジカンバ耐性遺伝子組み換えが栽培される地域では、現在のところ、ジカンバによる被害を被りたくなければ、ジカンバ耐性遺伝子組み換えを植えるしかオプションがないというところだ。ジカンバ耐性遺伝子組み換えであればジカンバがドリフトして流れてきても被害は被らない。ジカンバ被害を増やせば増やすほど、モンサントの商品が売れるというエコハザード商売、エコサイド商法とでもいいたくなるようなことになりかねない。その被害を訴える声に応えるどころか、今度はブラジルでジカンバ耐性遺伝子組み換えを売り出す準備をするとはいったい何事なのか。
 生物多様性の豊かなブラジルで、ジカンバ耐性遺伝子組み換え以外の生態系を殺してしまうようなことが起こされるとしたら本当の恐ろしい。セラードの大豆耕作地域の水はアマゾンにも流れ込む。アマゾンの生態系にも大きな影響を与える可能性は十分ある。

 このままではブラジルでジカンバ耐性遺伝子組み換え大豆が2020-2021年の耕作期(地域によって異なるが日本の秋に始まり、1月から3月にかけてが収穫期になる)に始まってしまうかもしれない。

 後者について、一言付け加えておく。モンサントはメキシコやブラジルの裁判などで敗北しても、それに従わないケースがたびたびある。自分が勝つ場合には敗者に訴訟の遵守を要求するのに、その逆の場合は無視する。昨年、モンサントに対する国際法廷が行われたが、本当に「法の支配」などどこ吹く風である。
 メキシコでの遺伝子組み換え大豆の栽培禁止の裁判は少数の先住民族の養蜂家たちが巨大企業に勝ったとして世界が注目した。ヨーロッパに蜂蜜を輸出することで生計を立てていた先住民族がモンサントの遺伝子組み換え大豆の花粉が蜂蜜に入り、市場から拒絶されてしまう。そこでモンサントの遺伝子組み換え大豆の耕作承認を無効にすることを訴えた。そして裁判は勝った。それにも関わらず、その判決がモンサントに無視される。このまま野放しになれば人びとも生態系も終わってしまうかもしれない。少なくとも大きな影響を受けざるをえないだろう。
 現在、国連で多国籍企業に対して法的に拘束力のある国際条約を作ろうという動きがある。どのように多国籍企業を規制できるのか、本当に重要で避けては通れない問題である。

Monsanto looking to sell dicamba-resistant GM soy seed in Brazil

Monsanto ignora prohibición de la SCJN; sigue siembra de transgénicos

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