種子を奪い、水道を奪い、教育を奪い、年金を奪い、医療を奪い、卸売市場も奪い、気候変動を激化させ、多くの生物を絶滅に追い込み、人びとの命が奪われる。公共の富はどんどん多国籍企業に奪われていく。多くの人びとの生活はより厳しくなる。しかし、奪っている側は決して傷つくことがない。なぜならばそれを規制する仕組みがないから。
原発事故が起きても責任を取らない、ダムが決壊しても補償をしない、汚染で人びとの命を奪っても逮捕すらされない。裁判で裁かれることもない。これは世界中で起きている。
そして、ISDS。人びとの利益を守る選択をした国や自治体などは多国籍企業に莫大な賠償金の支払いを求められる。それを恐れて、先取り的に人びとの利益を奪う政策を取る国が増えてきてしまっている。
人びとが多すぎるから食料が足りなくなるのではない。人びとが快適を求めるから気候変動が激化するのではない。食料生産はすべての人口をまかなうだけの生産があり、気候変動を引き起こさない生産方法、エネルギー創出方法があるにも関わらず、極少数の資本の利益のために、食料は分配されず、生産方法の転換が阻止される。阻止するのは極少数の資本、つまり巨大企業とそれを支える多国籍金融システムとそれに買収された政治。
TPP、RCEP、自由貿易協定、そこで利益を得るのは多国籍資本。安い農産物で消費者が助かるのではなく、地域の経済が破壊されて、地域の生産者、流通業者が排除されて、多国籍企業のシステムに変わってしまうことで、消費者の隷属は深まる。より危険な食を押しつけられても他の手段が消えてしまえば、それを食べるしかなくなる。
いくら個々人が生活を工夫しても、生き方を変えても、このシステムを変えない限り、悲劇は止まらない。
もうたくさんだ。多国籍企業を罰することができる国際条約を作ろう、という声が世界で高まり、グローバルなキャンペーンが組織され、すでにそのプロセスは国連で本格的に進み始めた。その名前は“a binding treaty on transnational corporations and other business enterprises with respect to human rights”(多国籍企業やその他の企業による人権に関する拘束力ある国際条約)、10月14日〜18日にかけて国連で討議が行われ、重要な一歩を進めつつある。
今後の世界を次の世代に安心して渡せるようにするためにも、今、そして明日の生活を守るためにも、世界中でこの国際条約の制定を支援することが重要だろう。この動きに注目!
GLOBAL CAMPAIGN
PRESS RELEASE: “HISTORIC PROCESS CONTINUES AT THE UN: THIS WEEK STATES ENTER SUBSTANTIVE NEGOTIATIONS OF THE TEXT OF A BINDING TREATY ON TRANSNATIONAL CORPORATIONS AND OTHER BUSINESS ENTERPRISES WITH RESPECT TO HUMAN RIGHTS”