12月24日に農水省で家畜の飼料に関する分科会が開かれていて、遺伝子組み換えジャガイモの家畜への飼料としての利用、EUではかなり前に禁止されているフィプロニルの規制緩和、さらには「ゲノム編集」飼料の後代交配種の取り扱いなどについて検討されていた(1)。
驚くのは1つ1つ、慎重な議論が必要な課題が短時間に8つも検討されていること。議事録はまだ公開されていないが、ほぼ農水省が提示した案通りの結論になっていることが予想される。遺伝子組み換えジャガイモの家畜飼料としての認可も、時代に逆行するフィプロニルの規制緩和も大問題(2)だが、ここではゲノム編集飼料についての検討について見ておきたい。
すでに遺伝子組み換えではないと判断された「ゲノム編集」で遺伝子操作された飼料は飼料として使えるということになってしまっているのだが、この飼料となる作物を使って作られた後代交配種についての検討となる。
結論としては「ゲノム編集」で獲得された性質が後代交配種で変化せず、亜種間で交配が行われておらず、摂取量、使用部位、加工等の変更がなければ、届け出は不要、という案となっている(3)。つまりひとたび届け出が行われた「ゲノム編集」飼料作物を使って、たとえば「ゲノム編集」作物同士を交配させる、あるいは認可されている遺伝子組み換え作物と交配させて新品種を作っても、その新品種は届け出が不要ということになる。
まったくめちゃくちゃな結論だ。後代交配種で変化しているかどうか、誰が確認するというのか? そうした種を作り出したバイオテクノロジー企業(遺伝子組み換え企業)が自主的に判断できることになる。こうなってしまえば、しばらくすれば「ゲノム編集」作物は実質的に届け出すらまったく不要な時代になってしまう。現在の遺伝子組み換え作物の審査であっても、実質的に遺伝子組み換え企業の自己申告を実験や検証もなしに合格のハンコを押す自動承認ベルトコンベアーでしかなく、税金を使ったセレモニーでしかないのだが、それすら省かせるというのがこの「ゲノム編集」をめぐるバイオテクノロジー企業の意図であり、日本政府の動きはそれに沿ったものとなっている。そして、それは窮地に陥ったモンサント(バイエル)などの遺伝子組み換え企業の救済策でもあるだろう。
そもそも親の品種も届け出で「安全」が実証されているわけではない。検証はない。さらにその「ゲノム編集」品種同士、あるいは従来の遺伝子組み換え品種や従来品種との交配によってさらに新たな問題が生じる可能性は排除されないが、そもそも審査の対象とすらならないのだ。
もはや、「ゲノム編集」作物の実質的な無規制、責任放棄を決めるようなこと。それをわずか8分の3時間=22.5分(議題が均等に審議されたとして)の検討だけで決めてしまったのだろうか? 検討委員は大学や民間企業の専門家のはずなのだが、その方たちはそれが順当と考えたのだろうか? まったく恥ずべき事ではないのだろうか?
そして、今後、警戒すべきこととして、もちろん、「ゲノム編集」飼料による健康被害、その栽培による生態系破壊があるが、たとえば飼料米など、日本での「ゲノム編集」作物の栽培の可能性も一段と高まったと考えざるをえないだろう。
今、しっかり反対の声を上げる必要がある。
(1) 農水省: 第50回農業資材審議会飼料分科会 及び 第35回同飼料安全部会
(2) 農水省: 飼料の基準値設定に係る評価書(案) (農薬:フィプロニル) PDF
(3) 農水省: ゲノム編集飼料及び飼料添加物の飼料安全法上の取扱いについて(案)PDF