日本水土総合研究所の海外情報誌ARDEC World Agriculture Nowの特集・国連家族農業の10年に世界の種子の動向について寄稿しました。
国連食糧農業機関(FAO)駐日連絡事務所所長のチャールズ・ボリコさんや東京大学大学院農学生命科学研究科の鈴木宣弘さん、愛知学院大学経済学部の関根佳恵さんなど錚々たるメンバーの特集になっています。
国連レベルでは小規模家族農業とアグロエコロジーの推進が2つの主柱となっています。それを強調すると、「国連なんて所詮多国籍企業や米国の道具だから、信用できない」などという反応が返ってくることがあります。でもそう見なすことは大きな間違いと言わざるをえないでしょう。
鈴木宣弘さんは「FAOの決死の巻き返し」と強調されています。つまり米国主導のIMF・世銀の動きに対してさまざまなレベルで闘いが繰り広げられ、その結果、気候変動問題や農業などの分野では重要な前進が勝ち取られています。それが国連家族農業の10年や小農や農村で働く人びとの権利宣言につながっているのです。これを「所詮、国連」と切り捨てることで米国政府を先頭とする多国籍企業の政治を止めるぎりぎりのチャンスを見捨てることにつながりかねないのです。
日本政府はFAOとは真逆の企業優先政策を進めており、FAOにもその方向に向けて圧力を加えています。日本はFAOへの最大の出資国となっているそうで、どうFAOがその圧力に屈せずに、世界の食と農を守る側に留まることができるか、日本にいるわれわれとしては日本政府のやっていることに大きな責任があると言ってもいいでしょう。そのような実態を知る上で、この特集は役立つと思います。
ARDECは印刷される冊子ですが、Web上で記事はすべて読むことができます。ぜひ、ご活用ください。
(僕の書いた記事のタイトルはかなり内容とは異なり、内容的には“「家族農業の10年」と世界での種子をめぐる争い”について書いたつもりです)。
http://www.jiid.or.jp/ardec/ardec61/
目次
国連 家族農業の10年
―UN Decade of Family Farming―
特集解題
国内技術検討委員会委員長 松浦良和
なぜ今、 「国連 家族農業の10年」なのか
国連食糧農業機関(FAO)駐日連絡事務所所長 チャールズ・ボリコ
「国連 家族農業の10年」の 具体化に向けて
東京大学大学院農学生命科学研究科 教授 鈴木宣弘
「国連 家族農業の10年」が問いかけるもの─「持続可能な社会」への移行─
愛知学院大学経済学部 准教授 関根佳恵
家族農業と在来種の種子保存
日本の種子を守る会 アドバイザー 印鑰智哉
家族経営農業と土壌の持続的利用
国立研究開発法人 森林研究・整備機構 森林総合研究所主任研究員 藤井一至
JICA SHEPアプローチの広域展開の現状と今後─普及事業における「ふつう化」を目指して
独立行政法人 国際協力機構(JICA)国際協力専門員 相川次郎
INFORMATION
「等身大」に理解する −モザンビーク−
元駐モザンビーク大使 橋本栄治
BOOK INFORMATION
土 地球最後のナゾ─100億人を養う土壌を求めて 藤井一至 著
TREND
─JIIDから─
アフリカ3か国の灌漑局長などの参加によるTICAD 7サイドイベントの取組(横浜)
東南アジア諸国局長クラスの参加による圃場整備ハイレベル会合の開催