原発を定点観測するFUKUSHIMA Project

 311東電原発事故が起きてもう早くも10年が経とうとしている。あの事故は多くの人の人生を変えてしまった。最近、年齢のせいか、周囲の訃報が相次いでいる。でも、原発事故がどんな影響を与えたのか、ということは問うことは難しい。自分の体調にどう影響を与えているのかについても明確に答えることは困難だ。
 本当にどんな影響があったのか? 直接高線量被ばくしていなければ「直ちに影響がない」としても、長期的には影響がありうるわけで、しかも長期的な影響には世代を超えた影響もありうる。もし、それを実際に突き止められたとしてもこの事故の責任者はわかった時にはこの世にはいないだろう。被害が証明できなければ被害がないことにされてしまう、このお粗末な政治。
 しかし、世代を超えた人への影響を計ることは難しくても寿命の短い野生生物にどんな影響があるかを調べればその影響は短期間に把握可能になる。世代を超えてどんな変化があるか、人より短い寿命の生物を監察することで、その影響をつかむことができる。

 琉球大学のフクシマプロジェクト。ヤマトシジミと呼ばれるシジミチョウの一種への原発事故の影響を追って10年目を迎えようとしている。
 蛹(さなぎ)から蝶への羽化は大きなドラマだ。しかし、被ばくした蛹は羽化できずに死んでしまうケースがあるという。一度も羽ばたくことなく死を迎える。そんな被ばく蝶の生態を若い研究者の方たちが10年間にわたって見守ってきた。

 311は確実に多くの人の人生を変えた。日本のあちこちに行っても必ず、そうした人に出会う。その後の政治の逆行によって、目には見える動きに必ずしもなっているわけではないけれども、これほど多くの人が人生を変えたというのはかつてない大きな事件だったはずだ。その犠牲も決して忘れるわけにはいかないが、同時に新しい社会をめざす動きも生まれ、確実に育ってきていると思う。でも、まだ目にはっきり見えないから、その大きさを理解することが難しいかもしれない。もちろん、一人一人の生き方や意識の問題に留めていい問題ではないし、放射線の影響だけでなく、自立した社会に原発はあらゆる意味で合わないことは言うまでもないが。

 定点観測することの重要性を改めて思う。

 そして早く、原発のない社会の実現を見たい。

FUKUSHIMA PROJECT
https://www.ko-photography.net/fukushima-project

フクシマプロジェクト大滝研究室の論文の数々
http://w3.u-ryukyu.ac.jp/bcphunit/fukushimaproj.html

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