やはり遺伝子操作食品に未来はない その3: 細胞培養食に警戒を!

 前の投稿で遺伝子組み換えサーモン開発企業や「ゲノム編集」作物開発企業が続々と破綻しようとしている状況を見た。遺伝子組み換え企業は大きな壁にぶち当たり、アフリカやアジアへの浸透や小麦や米などの主食に入り込もうと最後のあがきをしているのが現実だと言えるだろう。それではこうした遺伝子操作食品は今後、どうなるのか?
 
 今後のシナリオとしては3つあると考える。
1. 消費者が「ゲノム編集」食品を受け入れてしまい、バイエル(モンサント)などが農薬・害虫耐性「ゲノム編集」作物を次から次へと出すシナリオ。
2.「ゲノム編集」ということは後景に退け、フードテックを前面に打ち出し、「ゲノム編集」はもちろん、従来の遺伝子組み換えやRNA干渉、合成生物学などの遺伝子操作技術をフルに用いた細胞培養による食品を出していくというシナリオ。
3. 遺伝子操作技術を使わない自然の力を最大限に生かすというシナリオ。 “やはり遺伝子操作食品に未来はない その3: 細胞培養食に警戒を!” の続きを読む

やはり遺伝子操作食品に未来はない その2: 消える「ゲノム編集」食品

 遺伝子操作は従来の品種改良よりもずっと早く開発でき、しかも従来の品種改良ではできなかったことができるなどと言っていなかっただろうか? とりわけ「ゲノム編集」はその切り札ではなかったのか?
 
 Calyxt社は世界で初めて「ゲノム編集」食品を世に出したと言われているが、Calyxt社の前に「ゲノム編集」食品は存在していた。それが2014年に発売されたCibus社の除草剤耐性カノーラ(SU Canola)で現在主流のCRISPR-Cas9ではなくODM(オリゴヌクレオチド特異的突然変異誘発)という方法を用いて「ゲノム編集」されているとされていた(1)。
 
 しかし、2020年9月、このSU Canolaを対象に「ゲノム編集」食品は検出可能だとして科学論文が発表される(2)や否や、Cibus社はこれは「ゲノム編集」ではない、と言い始めた。ODMで編集しようとしていたが、その過程で偶然、突然変異でできたので、「ゲノム編集」ではない、と(3)。実際に「ゲノム編集」されていることは届け出書類に確認されているので、これはごまかしに過ぎないのだが、結局、このSU Canolaはこっそり市場から消えた。その後、残る「ゲノム編集」食品はCalyxt社の大豆と日本のサナテックシード社のトマト、リージョナルフィッシュ社のマダイ、トラフグだけになった。 “やはり遺伝子操作食品に未来はない その2: 消える「ゲノム編集」食品” の続きを読む

やはり遺伝子操作食品に未来はない その1:遺伝子組み換えサーモン

 遺伝子組み換えサーモン(鮭)をめぐり、再び大激論が米国で交わされている。このGMサーモンは2015年に米国食品医薬品局(FDA)が承認したが、その安全性や養殖方法などに大きな問題が指摘され、訴訟も起こされ、2020年にFDAの再評価を命じる判決が出て、その再評価が11月に提出され、パブリックコメントを受けて、公聴会が12月15日にオンラインで開かれた(1)。
 
 この遺伝子組み換えサーモンは2種類の他の魚の遺伝子を組み込むことで、本来、夏の間しか成長しないサーモンを年中育つようにして、半分の期間で倍以上に育つように遺伝子操作されている。しかし、サーモンの内臓がその成長に耐えられず、胃が破裂するなど異常を来した個体が多く、死ぬ確率も高いという。その安全性やその養殖の環境に与える影響についても疑問符が付けられている。 “やはり遺伝子操作食品に未来はない その1:遺伝子組み換えサーモン” の続きを読む

「ゲノム編集」食品が外来DNAを含まないという主張がウソである理由

「ゲノム編集」食品は外来の遺伝子や塩基が入っていない、だから自然と同じと政府や推進企業は言うけれども、それは何重にも誤り。『ゲノム編集ー神話と現実』の著者クレア・ロビンソンさんがそれを実際の研究論文に基づきながら説明している。 “「ゲノム編集」食品が外来DNAを含まないという主張がウソである理由” の続きを読む

CBD COP15:生物多様性を危機に陥らせる技術の禁止を!

 カナダのモントリオールで開かれている7日から19日まで国連生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)、大事な会議だけど、日本からの関心はどこまで集まっているか? 生物多様性が失われて、たとえばハチが絶滅すれば、人類は絶滅に瀕するとも言われるし、サンゴが絶滅したら、海は半分くらい死の世界になってしまう。当然、人の生存にも関わる。
 それほど切羽詰まった課題なのに、その肝心の課題に人類は十分取り組めなくなっている。というのも、危機に陥っている生物多様性を守ること以上にそれを破壊する技術を止めることに必死にならなければならないのが実情になっているからだ。今、どんな技術が現れてきているか、確認したい。 “CBD COP15:生物多様性を危機に陥らせる技術の禁止を!” の続きを読む

あらたな「ゲノム編集」魚の系統が受理

 12月5日、厚労省や農水省はリージョナルフィッシュ株式会社が開発した2系統のゲノム編集マダイと1系統のゲノム編集トラフグの届け出の受理を発表した。これは昨年すでに届け出が受理されたものといっしょに届け出されていたものの、全ゲノム配列解析の追加資料の提供が求められていた。今年の4月にその情報が提供され、その届け出が5日に受理された。 “あらたな「ゲノム編集」魚の系統が受理” の続きを読む

「ゲノム編集」食品を押し付ける授業が高校や大学で

 政府がやるべきことをやっているのであれば安心できるのだけど、やるべきことはやらずに、やってはならないことばかりをやっていたら不安は募るばかりになる。ため息出るけど、公金使って一体何をやっているんだ、金返せ、と言いたくなるようなことばかり。高校生向けに「ゲノム編集」を受け入れることを前提の「教育」が行われていることを知った。
 
 農林省の農林水産技術会議は昨年、「ゲノム編集」食品の理解促進のためのアウトリーチ活動と称するものを外部委託で行っている(1)。外部委託といっても委託されたのは元農水官僚。なんか身内で税金使ってやっている感があり、その報告書を読んで、無性に腹が立った。
 
 要するに「ゲノム編集」食品を肯定する生徒を増やすためだけの事業で、それを高校や大学対象を中心に行っているというのだ。だいたい、そのカリキュラムは想像つく。「ゲノム編集と自然の変異は区別がつかない」とか、「ゲノム編集を使うとより短期間で効率的に品種改良ができる」とか。要するに「ゲノム編集」は品種改良のためのバラ色の技術だという授業を行い、それを「理解した」ものがどれだけ出たかをチェックする内容だ。 “「ゲノム編集」食品を押し付ける授業が高校や大学で” の続きを読む

自然なタネまで特許で独占できる「ゲノム編集」

 「なんで『ゲノム編集』食品、反対しているの? 私はそんなもの栽培しないし、確かなモノしか食べないから大丈夫」
 
 それは大事だけど、それだけじゃ十分じゃない。その理由は多数あるけど、その中でも大事なのは「ゲノム編集」でないタネにも影響が及ぼうとしていることだ。
 
「なんで『ゲノム編集』でないタネにも影響が出るの? 交雑するから?」
 
 交雑の問題も大きな問題なのだけど、それだけじゃない。なぜかというと、普通のタネの遺伝子までが特許が取れるようになってしまって、遺伝子組み換え企業の独占物になりうるからだよ。 “自然なタネまで特許で独占できる「ゲノム編集」” の続きを読む