気候変動と共に深刻な影響を及ぼすのが生物絶滅危機。ハチがいなくなれば実を付けなくなって食料も作れなくなる。そんな生物多様性の危機に対処することが期待されるのが国連生物多様性条約第16回締約国会議(COP16)。コロンビアのカリで10月21日から始まり、11月1日まで続く予定。
どのように生物多様性を守るのか、というテーマに集中できればいいのだが、それをもっと困難にする危機が生まれつつある。それを作り出すのがバイオテクノロジー企業とAI技術の融合。合成生物学、「ゲノム編集」などをAI技術が統合していく。つまり、「こんなタンパクを作って」、とAIに頼めばと、AIがタンパク質を設計し、バイオ工場で作ることができてしまう、すでに技術的にはそこまで実現できる時代になってしまった。
でも、もちろん、神の領域に達したってわけではない。つまり、完璧なタンパクやそれを生み出す生命体が作れるわけではない。それは現在のAIを使ってみれば想像がつく。AIは使い方によってはそれなしには膨大な時間かけてもできないようなことを瞬間的に実現してしまう。その一方で、よく見るとデタラメな部分だらけなこともある。だからそんなデタラメなタンパクや生物が生み出されてしまう可能性があるということだ。
これが生態系に致命的な影響を与えてしまうことはすぐに想像が付くだろう。しかし、今やGoogle、Microsoft、Amazon、Appleはもちろん、世界の投資を集めて過熱している。そしてこの技術を規制するべき政治側は十分機能していない。
もし、人造人間を作ったら、それは人びとの怒りを引き起こすだろう。でも、それが家畜だったら、それが農作物だったら、花だったら、微生物だったら、人びとは怒らないかもしれない。でも、先祖代々守ってきた作物の模倣品が作られて、もはやそのオリジナルの作物の生産は不可能になってしまったらどうだろう? 自然な生物は消えて、人造生物だけが残る。そして、その人造生物にはデタラメな部分があって、結局、いつか絶滅するかもしれない。そうしたらどうなってしまうか?
あらゆる生物の遺伝情報をデジタル化して、それをAIに入れてしまう、こうすれば究極の遺伝子組み換え・合成生物・合成タンパク製造システムが作られてしまう。残念ながら今、そのプロセスが進みつつある。もはや元の生命は存在しなくてもいい、必要なのはデジタル情報だけ。生きている生物だけでなく、マンモスのDNAであってもいい。デジタル化した後は、その生物は絶滅させたって構わなくなる。少なくともAIにとっては。でも、生態系はその生物がいなくなったらその分、狂っていくだろう。
インドの農民が守ってきてくれたイネが日本を救うかもしれない。その農民の貢献に感謝して、その生産を守りつつ、貴重な生物多様性、遺伝資源を共有する、共に享受するシステムが必要ということで生物多様性条約は重要な条約となった。しかし、このデジタル技術とAI技術によって、その権利ははく奪され、自然な生命の価値はうち捨てられて、すべてはバイオテクノロジー企業の所有物に変えられていこうとしている。
しかも、このAIは莫大なエネルギーを使う。気候危機はさらに加速するだろう。
この技術がもたらす行き先は生物多様性の崩壊、気候危機の激化、人類の滅亡?
この行き先を変えることはできるだろうか? それを守る鍵はそれを守る人びとの存在。そしてこの技術の規制を求める声。しっかりコロンビアでの会議にも注目したい。
Black Box Biotech P2/2
https://gpenewsdocs.com/black-box-biotech-p2-2/
‘Black Box’ Biotechnology
https://www.etcgroup.org/content/black-box-biotechnology