このままでは日本は遺伝子操作大国に? 世界でスーパーで「ゲノム編集」食品を今、売っている国は日本くらい。それだけでなく、主食を重イオンビーム放射線育種したものにしようとしている国も日本くらい。そして、さらに重イオンビーム放射線よりも汎用性の高い中性子線育種を民間企業が始めたが、これも日本だけ。
中性子線育種とは放射線育種の一つ。重イオンビームを放射して、遺伝子の二重鎖を破壊して、塩基が失われた突然変異を作ったのが「コシヒカリ環1号」であり、その遺伝子を受け継ぐのが「あきたこまちR」。この重イオンビームよりも中性子線は汎用性が高いという。中性子線は電子と反応しないため、物質の奥深くまで入り込むことができ、人体に浴びれば、ガンマ線と比べ、約3〜200倍の腫瘍誘発、15〜45倍ほどの寿命短縮など有害な作用を引き起こすという¹。育種は品種改良を意味して、放射線を作物に浴びせるわけではなく、突然変異をしたものを利用して新品種を作るというもの。水素に吸収されるため、水分を含んだ微生物などでも照射の影響を与えることができるとしている²。
「放射線育種なんて歴史が長くて、広く受け入れられているじゃないか?」という言葉で片付けることはできない。確かにガンマ線による放射線育種は戦後まもなく始まったが、重イオンビームや中性子線はガンマ線とは比較にならないほど桁外れの重大な問題を引き起こす(重イオンビームによる線エネルギー付与[LET]はガンマ線に比べ5倍~1万倍)ものだけに、しっかりとした検証が必要だが、同じ放射線ということですまされてしまい、安全性を裏付けるデータは見いだせないのが現実だ。遺伝子の二重鎖を破壊する点において、「ゲノム編集」と同様の問題が生じうる。
しかも、この放射線育種は「ゲノム編集」ができないことができ、またその逆もある(添付図参照)。つまり、これら2つの技術は相補う関係にある。それを生かして、「ゲノム編集」企業のセツロテックと、中性子線育種のクオンタムフラワー&フーズが2023年2月に提携を発表している³。
遺伝子の仕組みはまだまだわかっていない。かつて自然放射線が進化を促してきたと考えていた時代もあったが、進化や遺伝はもっと精妙な仕組みがあることが最近になってわかってきた。壊してはいけないものとしてゲノムの仕組みはある。壊すことは進化の妨げになる可能性が大だ。わかっていないのに破壊してしまえば取り返しのつかないことが起きかねない。
「ゲノム編集」生物を作る際、政府規制機関による承認は不要で、任意の届け出だけとなっているが、放射線照射で突然変異させた生物の場合、この届け出すら不要となっている。つまり誰もモニターしていない。問題が起きても責任取らないだろう。
これまでの放射線照射施設は国の施設や独立行政法人だったが、クオンタムフラワー&フーズは民間企業(茨城県東海村)。欧米では放射線育種はさほど行われておらず、現在推進で走っているのは日本くらい。日本の市民が声を出さなければ、規制の話にもなりそうにない。
遺伝子組み換えでも「ゲノム編集」でも世界で規制の話が起きてきて、それに日本もなんとか追いつこうとしているところだが、放射線育種の場合は日本の市民が立ち上がらない限り、規制は実現できないだろう。既成事実化してしまうと、どんどん遺伝子操作生物がこの世界に広がっていってしまう。日本の市民社会の責任は大きい。
「放射線育種は問題ない」で済まさずに、現在のような無規制で進むことが果たして問題ないのか検証することは不可欠だ。このままでは続々とそうした品種が知らぬ間に増えていってしまう。有機だから安全と思ったら、それが遺伝子操作品種であるということも今後の日本では起こりうる(「ゲノム編集」はとりあえず、有機では認められないはずだが)。
来年から秋田県のお米は7割が重イオンビーム放射線育種のものに代わる予定だ(2030年にはほぼ100%)。農水省は5割の道府県での導入を目標にしている。
それにまず待ったをかける必要がある。オンライン署名:わたしは、遺伝子を改変された「あきたこまちR」を食べたくありません! https://act.okseed.jp/akitakomachir
参考情報
(1) NTT:中性子線とは?性質から応用まで解説
https://www.rd.ntt/se/media/article/0042.html
(2) クオンタムフラワー&フーズ:中性子線育種技術
(3) クオンタムフラワー&フーズ:『中性子線育種×ゲノム編集』で、 植物・微生物に世界最速のスピードで欲しい進化を起こす。|ニュースリリース