原題:Documentário – Derrubaram o Pinheirinho(ポルトガル語、1時間25分、ブラジル)
昨年2012年1月、ブラジルのサンパウロ州サン・ジョゼ・ドス・カンポス市のピネリンニョ地区で起きた事件。
8年に渡り6000人近くの人びとが住みついていた地区を突然2000人の軍警察が襲い、発砲し、住民は家財道具や服を取り出す間もなく、着の身着のまま、追い出された。軍警察はさらに避難所までも住民を襲い、殴りつけた。
あっという間に家財道具が入ったまま重機で住宅は破壊され、ほんのわずかな保証金を一部の人が受け取っただけで、住む場を多くの人が失った。人びとはちりぢりに。この地で多くの子どもが生まれ、育ち、その記憶もすべて破壊された。けが人や死者に関する正確な情報もわからない。
なぜ、こんなことが起きたのか? マスメディアはどう報じたか? 丹念に辿ったドキュメンタリー。
投機会社が放棄した土地にホームレスの人たちが住みつき始めたのが8年前。支援も得て、ようやく土地の権利が認められる時期に来ていたにも関わらず、市や州政府を握っていたPSDBと中央政府を握る労働者党(PT)の間の駆け引きに翻弄され、基本的人権を否定された人びと。
軍警察が襲う様はまさに戦争のようだ。幼児を抱いた女性が逃げる中で発砲される。
マスコミは人びとの貧しい住民に対する差別を煽るような報道を続け、真実はYouTubeやブログ、ソーシャルネットワークでようやく伝えられた。
巨大な選挙制度の中で大企業の利益のみに服する政治とメディア、その不正、非人道性を告発するドキュメンタリー。この現実を直視することなしに未来の政治は生まれない。