種苗法改正法案、なぜ審議入りすべきでないか

 種苗法改正法案、審議に入るべきでない理由、たくさんあるのですが、基本となることを説明します。

 農水省はこの間、種苗法改正の影響は大きくない、なぜかというと登録品種の割合はわずか1割程度で、9割の種苗は登録品種ではないので種苗法変わっても変化しないからだと説明してきました。お米の場合は84%は登録品種でない(一般品種)といいます。

 しかし、この数字の算出根拠に疑問を感じたので、計算してみたのです。農水省が出しているデータを使って。農水省に品種別の生産データを要求したら、米の農産物検査結果(1)を指定してきました。そこで2018年の生産量の確定数値を元に、2018年段階で登録品種であるか否かで計算した結果が以下のグラフとなります。

 つまり、品種の数ではなんと64%が登録品種でした。生産量で比較すると、コシヒカリやひとめぼれ、あきたこまちなどの登録品種ではない大ヒット品種の生産が圧倒しているので登録品種が占める割合は低くなりますが、それでも33%は登録品種でした。1割どころではないのです。

 この33%の数字は品種検査されたものでの量となりますので、品種検査されなかったものは入りません。品種検査されないものはたとえば市場を通さない企業の直接取引のケースや自主流通などが考えられますが、それらがすべて登録品種でないと仮定することはちょっとありえず、検査量は全生産量の7割程度になりますので、16%はどう考えても低すぎる値になります。

 農水省の言う16%はいったいどうやって計算したのか、ますます疑いが濃くなります。農文協『現代農業』の編集部も同じ問題にぶちあたり、さぐっていくと、どうやら農水省は登録品種のコシヒカリBLを一般品種のコシヒカリにまとめて計算していたとしか考えられないことがわかりました(1)。

 つまり、農水省のお米の登録品種が16%という説明は誤りであり、実際にはその倍近いと考えざるをえません。そして、この登録品種の割合は今後、上がる可能性もあります。というのも道府県ごとに稲・麦・大豆の産地品種銘柄が定められています。これは道府県ごとにその地域に適した品種を選ぶという制度ですが、その銘柄に選ばれている品種で見ると稲の銘柄の52%が登録品種なのです。実際に種苗法改正の対象となる品種は5294品種にのぼります。

 こうした情報はすべて農水省から得たものであり、農水省は当然、知っていなければならないはずのものです。それにも関わらず、登録品種の数を実際よりも少なく感じるように伝えていたことになると虚偽説明と言わざるを得なくなります。
 お米だけでなく、各道府県で力を入れている農産物でもやはり登録品種の割合が高いのです。これも農水省が発表したデータから出した数値です。

 この間、全国各地で農水省の数字のおかしさ、この法案説明のおかしさを訴えてきましたが、農水省は訂正するどころか、印鑰の算出の数字は間違っているとして、その間違いを訂正しようとしませんでした。そしてその間違った数字を使い続けて、全国の農業関係者の説得に当たり、マスコミもそのチェックせずにそのまま報道して、種苗法改正法案の成立を促してきたことになります。これではまともな公正な審議は期待できません。
 
 ですから、今国会での審議はいったんあきらめ、もう一度、根拠となる数字を確認し、どのような影響を全国の農家、そして消費者に与えるか、分析し直す必要があります。それなしに、22年ぶりの法改正をこんな形で行うことは許されないと思います。

 ですから現状のままの審議入りを認めることはできないのです。

 これ以外の問題については
農水省Q&Aに一言

(1) 農文協『現代農業』11月号
Q&Aでよくわかる「農家に影響はない」は本当か

算出データの出典:

農水省:米穀の農産物検査結果
https://www.maff.go.jp/j/seisan/syoryu/kensa/kome/

農水省:品種登録データ検索
http://www.hinshu2.maff.go.jp/vips/cmm/apCMM110.aspx?MOSS=1

農水省:各都道府県において主に栽培されている品種
https://www.maff.go.jp/j/kanbo/tizai/brand/b_syokubut/hinshu.html

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