より多くの市民がコメントを送ることで政府も無視できなくなる状況を作っていくしかない。ということで今回も提出期限間近になってしまったが、コメントを書くことにする。
以下の文章を参考にして、ご自身のコメントを送られることを切に望む。以下の文章はご自由にお使いください。4月26日追記:4月24日付けで承認。詳しくはページ末尾に。
パブリックコメントのあり方について
日本に住む住民の多くが遺伝子組み換えを避ける食生活をしていると考えていると思います。しかし、日本は世界最大の遺伝子組み換え作物輸入国となっています。そして政府も次から次へと遺伝子組み換え作物を承認しています。パブリックコメントの存在すらほとんど知られておらず、パブリックコメントにはきわめてわずかなコメントしか送られていないのが現実です。これは不都合な事実を可能な限り広く知らせずに進めてしまおうという意図なのではないかと思わざるをえません。
南アフリカでは遺伝子組み換え作物を承認するためには遺伝子組み換え企業は新聞にその旨の告知が義務づけられているそうですが、日本でもそのような形で告知を義務づける必要があるでしょう。そしてパブリックコメントもかならずマスコミに流れ、多くの市民が知るところにならなければ意味がありません。
遺伝子組み換えの承認、あるいはこのパブリックコメントのあり方の変更が必要であることをここで述べておきます。
除草剤アリルオキシアルカノエート系及びグリホサート耐性トウモロコシについて
除草剤アリルオキシアルカノエート系は2,4-Dを使った除草剤であり、2,4-Dはベトナム戦争の枯れ葉剤作戦で使われた枯れ葉剤の主成分です。ノルウェイ、スウェーデン、デンマークではその毒性ゆえに使用が禁止されており、カナダのいくつかの州でも使用が制限されています。ガン、精子の減少、肝臓病、糖尿病、パーキンソン病、内分泌障害、妊娠障害、神経毒性、免疫抑止などの危険性が指摘される農薬であり、WHOも発ガン性の可能性のあることを認めています。現在でも除草薬として使われていますが、すべてを枯らせてしまうため、その使用はすべての草を枯れさせて整地する場合などに限られています。
しかし、この枯れ葉剤耐性遺伝子組み換えトウモロコシの栽培が大々的に始まってしまうと、広大なトウモロコシ畑に大規模に撒かれることになり、枯れ葉剤の使用が25倍になると懸念する研究者もいます。すでにラウンドアップの使用が増えて、地下水、川、雨にもその成分が検出されるという汚染の広まっている上に、さらに枯れ葉剤が撒かれることでその汚染はより深刻になり、大規模栽培が予想される米国では穀倉地帯の住民や農民にはその汚染による健康被害、環境被害への懸念があり、大きな反対運動が起きています。
3月19日には南アフリカ政府が枯れ葉剤耐性遺伝子組み換えトウモロコシを承認したことに対して、南アフリカの他、米国、アルゼンチン、ブラジル、エクアドルの市民団体がこの承認が大量の枯れ葉剤の散布につながり、穀倉地帯での多くの人びとの健康が損なわれる人権侵害をもたらすとして、国連人権高等弁務官、生物多様性条約事務局長に南ア政府の決定への介入を求める書状を送っています。日本はすでにいくつもの枯れ葉剤遺伝子組み換えトウモロコシを承認してしまっていますが、日本政府にも介入が必要となっている事態であることを危惧せざるをえません(South Africa Approval of Dow’s GM Soybean Slammed Worldwide)。
遺伝子組み換え技術全体を見直す時
そもそもなぜ枯れ葉剤が必要になってくるのでしょうか? 遺伝子組み換え企業は遺伝子組み換え作物を導入すれば農薬が減らせると宣伝しました。しかし、実際には導入後10年で使われる農薬は大幅に増えています。さらに深刻なのはグリフォサートに対して耐性の持つ雑草が米国の農園の半数以上で確認されるに至っており、もはやグリフォサートの効力がなくなっていくという事実です。除草剤に耐性を持つように作られた遺伝子組み換え作物の遺伝子がなんらかの方法で周辺の雑草に作用して、雑草が除草剤への耐性を持つようにいたったと考えられます。このようなところに新たな除草剤への耐性を持つ遺伝子組み換えを導入したところで、その耐性もまたいずれ雑草に転移し、効かなくなっていくことでしょう。
次から次へと新しい農薬を使うことで、自然に対して見境のない軍拡競争をしているようなものです。環境の汚染は毎年進み、害虫のみならず益虫も死に、鳥などを含む環境に大きな影響を与えることが懸念されます。現在、必要なのはこの軍拡競争を止め、遺伝子組み換え技術そのものを見直し、農業のあり方を変えていくことではないでしょうか? すでに南米ではアグロエコロジーの実践が進み、農薬を使わずに害虫や雑草の害から守る方法が進められていますし、日本にも多くの例があるはずです。それらを生かすことが今不可欠な時期に来ていると思います。
今回の遺伝子組み換えの承認の問題点は枯れ葉剤耐性というだけではもちろん、ありません。どちらもNK603系列ですが、このNK603を飼料としてラットに与えた結果、きわめて高い割合でガンになったり、早死にするという衝撃的な研究発表が昨年カーン大学で行われました。この研究結果を支持する科学者の数は日々増えており、日本政府ももっと慎重な検討が必要になっているはずです。
上記の理由からこの2つの遺伝子組み換え作物は承認すべきではありません。
パブリックコメントの送り先
パブリックコメントの送り先は2つ。環境省と農水省。農水省は2000字の字数制限あり。環境省にはメールで送るようになっており、字数制限は書かれていない。どちらに送っても共有されるようなので、制限のない環境省に送るのも手かもしれない(共有されなかったら嫌だからどちらにも送るという手もあるが)。
- 環境省自然環境局野生生物課外来生物対策室
- 遺伝子組換えトウモロコシの第一種使用等に関する承認に先立っての意見・情報の募集(パブリックコメント)について(お知らせ)
- 農林水産省消費・安全局農産安全管理課
- 遺伝子組換えトウモロコシの第一種使用等に関する審査結果についての意見・情報の募集について…オンラインフォームはリンク先ページの末尾
4月26日追記:
農林水産省は4月24日、この2種の遺伝子組み換えトウモロコシを承認した。
送られたパブリックコメントは95通。その中から回答したのはわずか6つの論点のみ。枯れ葉剤耐性という米国でも大問題になっている点の指摘については今回も無視。遺伝子組み換え一般に関するよくある受け答えのみ、毎回ほとんど同じような内容。不誠実きわまりない。
「科学的」という言葉を使いながら現実に米国で起きている現実を無視するという非科学的な姿勢はいかがなものか。
以下、農水省