世界で進む有機、脱農薬の動き、真逆の日本

 かつて日本の再生可能エネルギーに関する技術は世界のトップをいっていただろう。それが原発や石炭火力にしがみつく政治によって世界から周回遅れになってしまったという。
 同じことがいろんなさまざまな分野で起きている。農業もその1つ。
 日本の有機農業は世界に大きな影響を与えている。海外では自然農法の福岡正信の『わら一本の革命』はとても有名だし、日本の実践に学んだ取り組みが数多く存在する。それなのに日本政府は「強い農業」「民間企業の農業参入」という名の下で農業の企業化・工業化という世界が失敗した道を突き進む。そんな中で、日本では高い技術を持った有機農業の担い手に跡継ぎを見つけるのが大変な事態になってしまっている。
 一方、世界を見たらどうだろう?
 フランス政府は公共セクターでの食料の半分を2022年までに有機あるいは地域で作られたものにする方針を決めた。有機農業を振興するだけでなく、慣行農業でも農薬への依存を減らす施策に取り組んでいる。農薬を減らすためのロードマップ作りが始まっている。モンサントの農薬グリホサートも3年以内に禁止する。ドイツは2030年までに有機農場の割合を20%に増やすという。グリホサートは可能な限り早く禁止する方向になっている。オーストリアではすでに通常の市場の2割は有機と聞くが、有機農業はEUでの最大の成長産業になっている。米国でも同様の傾向。先進国だけではない。ラテンアメリカはいうにおよばず、フィリピンやインドでも急成長を遂げている。

 50年後の日本はどうなってしまうだろうか? 子どもたちは幸せに過ごせているだろうか? このままでは世界から忌避される国になってしまうのではないだろうか?
 こうなってしまう理由は言うまでもなく政治のせいなのだが、政治を変えるといえば、その実現可能性の低さに多くがあきらめてしまう。確かに政治をすぐに変えることは難しい。しかし、市場はどうか? 政治を変える前に市場を変える。市場が変わればやがて政治も変わる。市場を変えるにはどうすればいいか、消費者の行動を変えれば可能だ。消費者の行動はどうすれば変わるか? 消費者が十分な情報を持つ時だ。十分な情報を共有できれば、行動は変わっていく。最終的には政治も変えなければだめなのだが、その大きなきっかけは日々の消費から作ることができる。その流れから公共政策を明確化し、最終的には政治を変える。

 米国の政治のひどさはNHKすらも報道する(NHKに報道する資格があるか、ちょっと疑問なほど、自己検証がされていないのだが)。でも、その背後で市場は変わりつつある。そして確実に変わりつつある動きがある。もちろん、現在強いのは多国籍企業を軸とした経済の動きだが、その背景に強い底流ともよぶべき動きが生まれつつある。

 決して日本だけが特殊なのではない。こうした動きは日本でも必ず実現できるだろう。というか、日本はこの分野の先進的取り組みでも世界に知られている国。結局、宝の持ち腐れをしていることに当の日本人が気がついていないだけのことなのだ。ただし、情報共有においては日本はまだまだ低開発国であることを反省しないとせっかくの宝も生きてこない。

France to make half of all food in public sector organic or local by 2022

フランス政府の農薬依存を減らすためのロードマップ策定に関して
Lancement de la concertation sur les propositions de plan d’actions sur les produits phytopharmaceutiques et une agriculture moins dépendante aux pesticides

ドイツは2030年までに有機農場の割合を20%にまで増やす

農業負債で自殺者の多かったインドの村が有機農業で貧困をなくしてしまったという例
How This Telangana Village Banished Poverty And Farmer Suicides Through Organic Farming
Indebtedness and farmer suicides were common, but not anymore.

食に関する批評家マイケル・ポーランのインタビュー:消費者のボイコットは米国資本主義のアキレス腱である
Michael Pollan: Consumer Boycotts Are ‘Achilles Heel of American Capitalism’

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