ブラジルは2003年の種子法改正によって、モンサントが要望する種子の知的所有権を保護する法制度を準備し、2005年の遺伝子組み換え作物栽培完全合法化につなげた(もっとも非合法にそれ以前にも遺伝子組み換え大豆がアルゼンチンから持ち込まれ耕作されており、その既成事実をテコに強引に合法化したといえる)。
しかし、この2003年の種子法では画期的な条項が新たに作られた。それかクリオーロ種子条項。先住民族や伝統的小農民が貴重な農業生物多様性を守ってきたその意義を認めて、その種子にこの種子法の適用を除外することによって、農民による種子の保存、交換、売買の自由と権利を守った。
そればかりではない。この種子を拡げるための種子交換会やシードバンクの設立を政府の予算で行うばかりだけでなく、政府がその種子を買い上げ、必要とする農家に売ることも行われた。
これはブラジルのアグロエコロジー運動の貴重な成果である。
しかし、今、ブラジル議会でその貴重な成果を打ち消してしまう法案が審議されようとしている。827/2015法案と呼ばれるもので、種子開発企業の育成者権を強化することを目的にしたものだ。農家は種子を買う時だけでなく、収穫を売る時にも2度にわたり種子企業に払わなければならなくなる。販売する際にもその種子を開発した企業の承諾が必要とされる。そして、クリオーロ種子、つまり農家が代々育ててきた種子の権利が大きく損なわれる危険がある。
この記事ではそう書かれているわけではないのだが、ラテンアメリカを駆け抜けてきた「モンサント法案」の一種、いや強化バージョンがブラジルにも登場したと考えてもいいかもしれない。
ブラジルだけではない。一度、憲法裁判所が違憲を宣告して法が廃止されたグアテマラでも1月11日、再び「モンサント法案」が掲げられたと報じられている。
種子を支配することで、食を、そして社会を支配しようという多国籍企業の野望は再び、ラテンアメリカでも動き出している。日本でも国や地方自治体の種子生産への関わりが攻撃され、多国籍企業へと種子の生産が移管されようとしている。
種子を多国籍企業からどう守るか、これは現在、世界的な最重要のテーマとなっている。
Brasil: Projeto de lei quer proibir agricultores de produzir, distribuir e armazenar sementes