世界でラウンドアップ(グリホサート)に関する有害性の認識が高まり、禁止の流れが出ているのに、日本では逆に規制が緩和され、禁止してほしいと自治体などにかけ合っても、「安全な農薬で基準を守って使っている」などとして変えようとしないケースが少なくない。
なぜ、世界が危険と言っているものが日本では安全とされるのか? その1つのカラクリには農薬の評価方法の問題があるだろう。実はグリホサートだけを検査しても危険はわからないからだ。グリホサートは水溶性で人・動物、植物の細胞は脂質に包まれているので吸収されていかない。素通りしてしまう。実際にグリホサートをかけても草は枯れもしない(写真)。でも、これでは農薬(除草剤)として機能しない。どうしているのかというと、実際に売る製品には界面活性剤を混ぜている。こうするとグリホサートは脂質の膜をくぐって細胞の中に浸透でき、植物はアミノ酸が作れなくなって枯れてしまう。
農薬の評価はこの界面活性剤を含んだ状態ではされていない。純粋なグリホサートだけで評価される。実際に動物実験したとしても、これでは細胞に吸収されないので症状も出ず「安全です」ということにされてしまう。
しかし、実際に売られているラウンドアップには界面活性剤など成分の公表されていない添加物が入れられている(特許であるとしてその詳細をモンサント[現バイエル]は公表していない)。その添加物が入ったラウンドアップで実験をすると、その有害性が発揮されることがわかる。
本来、使われる状態が安全かどうかで審査しなければならないはずだが、主成分がOKであれば添加物に何を入れるかが問われない。現実で使われるのとは異なる実験室の中だけの条件で問題がでなければ安全ということになってしまう。だから、こうした条件で確かめられた「安全性」はまったく現実とかけ離れたものと言わざるを得ない。
欧州司法裁判所は2019年10月1日に、農薬は売られている状態で審査しなければならないという判断を下した。画期的な判断で、これで判断するのであれば売られているグリホサート系農薬はすべて禁止せざるをえなくなるだろう。
日本政府は今年からネオニコチノイド系農薬やグリホサートの農薬としての再評価を始めることになっている。その際、評価基準が大いに問題となる。これまでと同様に主成分単体だけで判断するのか、それとも売られている状態で評価するのか。
その評価方法をどうするのか、しっかりと問いただす必要がある。欧州司法裁判所の決定を踏まえて、売られている状態=実際に使われる状態での安全性を審査すべきである。
写真(Science Directから)
左から2番目が純粋なグリホサート(一番左は対照実験用)。ほとんど枯れていない。一方、3番目、4番目、5番目が添加剤入りのグリホサート3種をかけたもの。こちらは植物が枯れている。一番右のものは添加剤だけ。添加剤がもっとも有毒だと言われる所以が一目瞭然。世界に撒かれるのは右側。
「グリホサートは安全」の虚構
https://project.inyaku.net/archives/4600