米国における農業生物多様性は前世紀急激に消失した。National Geographicはそれを見事なインフォグラフィックで表現した。1903年から1983年の80年間に93%の多様性が失われた。農民が種子を取ることをやめ、企業が種子を握るようになったことの結果だろう。 Our Dwindling Food Variety
今なお、ラテンアメリカやアフリカでは農民たちが種子を残し、次の耕作に備えている。しかし、今、それを禁止し、農民が自分たちのタネで農業していくことを犯罪とする法制化が進んでいる。
その現状をこの分野で国際的な活動を続ける市民組織、Grainが詳細にまとめている。
「ラテンアメリカにおける種子法:何も生み出さない攻撃、抵抗は強くなり広まる」スペイン語 Leyes de semillas en América Latina: una ofensiva que no cede y una resistencia que crece y suma [2013-11-2追記] 同記事の英語版も Seed laws in Latin America: the offensive continues, so does popular resistance
「ARIPOの栽培種保護法は農民を犯罪者にして、アフリカにおける種子のシステムを弱体化させる」英語 ARIPO’S plant variety protection law criminalises farmers and undermines seed systems in Africa
どちらも種子企業の知的所有権を強制する法制化が農民の権利を奪おうとしていることに警鐘をならすものだ。 TPPが推し進める企業の知的所有権とはこうした世界に向けたものだといえる。世界の農民の権利を踏みにじり、ほんのわずかの多国籍種子企業(その筆頭はモンサントやダウ、シンジェンタなどの遺伝子組み換え企業)のための体制にしようというものだ。
こうした動きがまかり通ればいかに、生物多様性を守ろうとしても世界の生物多様性は大きく損なわれてしまう。そして、多くの農民は農業生産を続けられなくなり、土地から追い出されてしまうだろう。土地が大土地所有者や企業的農園に集中してしまう。そして生産性は落ちる。大規模農業は生産性が高いと見せているが実際的には小規模農業に生産性ではかなわない(Small Farms, Not Monsanto, Are Key to Global Food Security 憂慮する科学者連盟)。
日本の農業はその種子生産も国外に頼っている。そこの生態系が壊れてしまえばその生産も大きな影響を受ける。「日本の農業を守れ」というだけでは日本の農業すら守れない。
ラテンアメリカやアフリカの農民の種子の権利を守る必要がある。そしてそれはTPPが引き起こす問題の1つであることを認識する必要がある。
Grainの2つの記事は日本語にしたいほど重要なものだが、最近のラテンアメリカでの種子法に対する闘いは特筆に値する。施行段階に入ってから政府に2年間の法の実施を余儀なくさせたコロンビア、下院は通過したものの、上院で法案審議を止めているチリ、そして、昨年、種子法を覆したメキシコなど、生物多様性、そして農民の権利を守る闘いが高まっている。