遺伝子組み換え魚を琵琶湖で放流する?!

遺伝子組み換え魚の放流が日本でもうすぐ実施予定とは知らなかった。琵琶湖で放流間近?

 外来種の魚であるブルーギルが琵琶湖で繁殖し、在来種の脅威となっているということで、ブルーギルのオスにゲノム編集による遺伝子操作を加え、卵を作る遺伝子の働きを弱めた精子にして、そのオスを放流。琵琶湖で棲息するメスと交配させ、メスが生まれたら、それは卵が作れなくなり、オスが生まれた場合は親のオスと同様の遺伝子を持ち、さらに他のメスと交配して、卵が作れないメスとなり、数が減って、絶滅においやる、というもの。

 外来種の急増や特定の害虫の急増は世界で大きな脅威になっている。物理的な外来種の駆除は大変なため、これまで放射線照射したオスを大量に放出することで数を減らす試みなどがされてきたが、これを遺伝子組み換えでやろうということで、すでに遺伝子組み換え蚊の試みが世界で行われている。
 遺伝子組み換えしたオスと交配したメスは子孫を残せなくなるので数が減っていくというもので、これまでブラジルなど世界各地で大量の遺伝子組み換え蚊が放出されてきた。しかし、その結果は大失敗に終わったと言われている。失敗したデータは秘密にされて、公開されていないため、詳細はわからないが、試験放出をしたブラジルの地域では放出後、デング熱の非常事態宣言が出される事態となった。つまり蚊を減らすことに失敗し、さらにデング熱などの症状の悪化すら見られた。
 遺伝子組み換えオスと交配したメスは完全に不妊になるかというとそうではなく、一定の割合で幼虫が育っていってしまう。放出した遺伝子組み換え蚊は生態系には残らない(そのオスが死ねば終わりになり、新たに生まれてこない)と言われてきたのに遺伝子組み換え蚊が棲息していることも確認されてしまっている。

 今回の場合はどうなのか? 遺伝子組み換えオスとの交配で生まれたメスがどのような確率で不妊化するかが鍵だろう。もし、そこに生存する確率が一定あるとすれば、遺伝子組み換えブルーギルが増える危険が生じる。さらに、もし、在来魚の遺伝子に影響を与えるようなことがあったら、今度はその在来種の魚が絶滅に追い込まれるということもありえるのではないか?

 外来種の生物が在来種の生物の脅威となっていることは深刻な問題であると思う。しかし、遺伝子組み換えによって、特定の生物を絶滅する方法は恐ろしいものがある。いったん環境の中に放った遺伝子組み換え生物はコントロールできず、取り返しの付かない生態系の破壊につながりかねない。新たなリスクをしょってまで、やるべきことなのか、慎重な議論が必要だろう。

 資料によるとこの遺伝子組み換えブルーギルの放流は来年となっている(3)。果たして、どこまで安全性は確かめられているのだろうか? いや確かめようがあるのだろうか?

“微生物などの遺伝子を「組み入れた」生物を野外に放出するには、国際的な枠組みに基づき制定された生態系の多様性を守る「カルタヘナ法」で、国への届け出と承認が義務付けられている。しかし、ゲノム編集で遺伝子の一部を「壊した」今回のようなケースは規制対象外で、環境省に任意の届け出を行った上で実施する。”(毎日新聞の記事から)

 環境省がすでにゲノム編集で遺伝子を破壊しただけのものは遺伝子組み換えではないとしてカルタヘナ法から外すという方針を発表してしまっている。つまり、届け出するかしないかは任意で、勝手にゲノム編集された生物を環境に放つことはすでに自由にできる!(今回の場合は外来魚なので、「外来生物法に基づく国の許可は必要で、地元の了解も取る」とのこと)。

 つまり遺伝子組み換え蚊を放つ場合は申請して認可を得なければならないけれども、ゲノム編集で遺伝子操作をした場合には加えた遺伝子が残らないはずだということにすれば、申請すら必要がないということに。これでは自然界に遺伝子操作された生物を放つことがいくらでもできるということになってしまう。主に農畜産物を念頭に、環境省、農水省、厚労省とその検討を見てきたのだけど、このような生命体が自然界にすでに放つことがOKだという事態にあらためて驚かざるをえない。このままでは日本はあっという間に遺伝子操作パラダイスに変わってしまう。

 日本各地で自然環境保護運動を行っている方たちはこの問題にどう取り組んでいるのだろうか? 日本に生きるさまざまな生命を考えればこの環境省の方針は変えさせなければならないと思う。

関連記事:
https://mainichi.jp/articles/20190731/ddm/001/040/140000c

(1) 熱狂ゲノム
第1部 身近に迫る技術/1(その1) 遺伝操作で外来魚駆除 ブルーギルを不妊化 琵琶湖で実用目指す(有料記事で中味は最初以外読めていません)

(2) 熱狂ゲノム ビデオ(こちらは非購読者も見られます)

(3) 遺伝子編集技術を用いた不妊化魚による外来魚の根絶を目的とした遺伝子制圧技術の基盤開発

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