農水省の「ゲノム編集」シンポジウム

 本日行われた農水省の「ゲノム編集技術を用いた農林水産物を考えるシンポジウム」、予想通り推進側だけの一方的内容、今、世界で「ゲノム編集」にぶつけられている問題には一切触れず、これまでの繰り返しの古い説のオンパレードで新しい発見はなし。批判も封じて、消費者とコミュニケーションと言われてもなぁ。

 大きな問題だと思ったのは「ゲノム編集」による想定外の変異について、オフターゲット変異だけに絞っていたこと。オフターゲットについては現在、遺伝子操作方法の改善もあり、発生の低減も見られているけど、一方で、オンターゲット(狙い通り)の遺伝子破壊ができた場合でも想定以外の変異が起きていること、そして遺伝子の大量欠損とそれに伴う変異が起きるケース、さらにDNAの破壊以外にもエピジェネティックな機構の損傷の問題も指摘されており、これらは手が打てていないのが現状だろう。
 うまく行っている部分だけ宣伝しているだけで、あまりに内容的に乏しかった。

 消費者庁は「ゲノム編集」の表示義務については今後の動き次第とするが、遺伝子組み換え企業に寄り添う松永和紀氏は「ゲノム編集」の表示義務が食品のコスト高につながり消費者の負担になる、という遺伝子組み換え食品表示義務化運動を潰すために使われた古い論法を再び持ち出して義務化に反対する(もう少しマシな話をするかと思ったのだけど)。実際に種苗会社が自分の種苗に表示をするにはコストなんてほとんどかからない。食品流通の下流においてもコストはさほど大きくないということは証明されている。
 まだ「ゲノム編集」の検出技術が確定していないので運営が難しいと言われればそうだろうが、逆に言えば、この段階で流通すべきでないだろう。また、検出は可能だと科学者たちは言っているので、EUでは数年内に制度化される見込みもある。その時に彼女はどう反応するのだろうか?

 日本ではたとえば稲の種籾に「遺伝子組み換えされていません」と表示することはできない。8つの遺伝子組み換え作物以外の表示は禁止されているからだ。でも証書のある原種から作られた種籾であれば「ゲノム編集していない」という表示は法的に可能。
 この種苗への表示がなければ日本の食のトレーサビリティは崩壊する。有機農業も維持できなくなってしまうだろう。有機農業では「ゲノム編集」は使ってはいけないのに、それを知る方法がなければどうやってやれというのか。そして、EUやそれにならう国には日本の農産物も輸出できなくなる。だから種苗への表示は決定的に重要である。
 すべては種苗の表示から始まる。すべての種苗事業者(もちろん、地方自治体も含まれる)に実施をよびかけたい。「ゲノム編集」の有無の表示を!

添付画像は消費者庁食品表示企画課の資料から。そのページ以外は以下のリンクから
https://www.maff.go.jp/j/syouan/nouan/carta/tetuduki/attach/pdf/201225_sympo-15.pdf

今日のシンポジウムの資料すべて
https://www.maff.go.jp/j/syouan/nouan/carta/tetuduki/201225_sympo.html

YouTube動画
https://www.youtube.com/watch?v=C-gqgkiK15s

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