再び「モンサント法案」が駆け巡るー日本も危ない

相次ぐ裁判や規制の強化で窮地に陥るモンサント・バイエルを救済する通称「モンサント法」が今後、世界各国で続々と再び出てくる可能性がひじょうに高い。

 アルゼンチンではマクリ大統領が必要緊急大統領令(DNU)を使って「モンサント法」を制定しようとした(1)。なんで緊急案件でもないのに、緊急案件用のDNUを使うかというと国会で審議したら確実に否決されるからだ。アルゼンチンでは2012年に「モンサント法案」があらわれ、それは農家のみならず市民の反対も引き起こして廃案となった。それから何度も法案上程の試みがあったがすべて頓挫。次期大統領選が危ぶまれるマクリ大統領、なんとかDNUで通したかったのだろう。

 なぜ、「モンサント法」か、というと、現在のアルゼンチンの種苗法には自家採種を禁止していない。米国やカナダ、オーストラリアでは農家は遺伝子組み換え作物の種子を自家採種したら「モンサント警察」に弾圧され、下手したら裁判で巨額賠償を求められるが、アルゼンチンにはその法制がない。だから農家も自家採種できるのでモンサント(バイエル)はその分、損する。
 バイエルとしては毎回必ず、ロイヤリティを徴収したい。その徴収を穀物企業にやらせようとした。種子の領収書がない穀物は穀物企業が農家にロイヤリティを払わせる、というものだが、これも失敗。

 このDNU、とんでもない事項が入っている。種子を買うと、その種子を売った企業は売った額の1.5倍の所得税の免除を得られるという。え、どういうこと、1.5倍の所得税免除って。普通何パーセントかの免除でしょ? 150%の免除って? 要するに売る度に売った額の半分は政府が企業にお金を払うということなのだそうだ。企業優遇の極みのような大統領令。これで大きな反発を呼んで、この令の発布はできなくなった模様。でもこれで終わりではないだろう。再び、「モンサント法案」が出てくることは確実だろう。

 アルゼンチンだけではない。チリでも今、最終的な攻防となっている。チリではTPPの参加によって「モンサント法」の制定が義務付けられてしまう。広範な反対運動が取り組まれ、住民投票も行われ、93%近くが反対するという中、下院は4月にすでに承認し、上院も財政委員会が承認、最終の段階を迎えつつある(2)。

 メキシコでもペルーでも「モンサント法案」が出てくるだろう。そして、日本も同様。すでに日本政府はこのモンサント法の土台となるUPOV1991条約を批准してしまっているが、種子育成者の知的所有権を強化する種苗法改悪がもうじき上程される可能性がある。

 生物多様性が激減し、2050年には100万種の生物が絶滅し、第6期絶滅期を迎えようとする中、多様性を守ることに必死にならなければならないのに、多様な種子を排除して、企業の極少数の種子を強いる動きが強められている。

 こうした動きに抗して多様な種子を守る運動も世界で強まりつつある(3)。未来を守るのはどちらの動きか、あまりに明白だろう。

(1) Macri intentó sacar por decreto la Ley de Semillas “Monsanto”

(2) Patricio Véjar: “Protocolo para el TPP no nos protege de nada”

(3) Urge un cambio de sistema para enfrentar grave crisis de la Biodiversidad

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