アマゾン破壊の資金提供を止めたノルウェーとドイツ、日本とは正反対

またアマゾン森林火災のことを書く。またかと思われるかもしれないけれども、この問題は私たちの食や日本における民主主義の問題に深く関わっている。食や農、遺伝子組み換えの問題も、種子の問題も、アマゾンの問題も大きな1つの問題を成す要素であり、別の問題ではない。アマゾン森林火災は日本でも報道されるようになっているが、日本政府の対応がいかに他の政府と違っているのか、残念ながら報道されていないので少し詳しく書きたい。

 アマゾン森林の破壊を食い止めるために、アマゾン基金(O Fundo Amazônia)が2008年に作られた。ノルウェー政府が93.8%、ドイツ政府が5.7%、残りがブラジルの石油会社ペトロブラスがその費用を出している。
 この基金はアマゾン森林の破壊を食い止めるためにこの基金が果たしている役割は小さくない。たとえば、国立宇宙研究所(INPE)が衛星を使ってアマゾンを監視しているのだが、その費用の一部もこの基金が拠出している。それ以外にもアマゾンの中における持続できる生産活動への支援や自然保護のさまざまなプロジェクトの支援、先住民族への支援を実現し、実際にこの基金が設立されてからアマゾンからのCO2の排出は激減するなど、成果を収めてきた。

 しかし、ボルソナロ政権は今年6月にこの基金の運営を決めてきた2つの委員会を一方的に廃止を決めた。要するに、アマゾンのことは外国のいいなりにならず、自分たちで決める、それは主権であり、それを奪うな、というわけだが、問題はその「自分たちが決める」の自分たちとはブラジルの大地主など寡占権力とそれに結びついた多国籍企業であって、地元の住民では決してないということだ。先住民族を含む地元の住民はこの基金の恩恵を受けてきた。でもボルソナロ政権はこうした制度がアマゾンの開発の制約になるとして自分たちの言い分を聞くものへと勝手に変えようとしたのだ。

 こうした姿勢がアマゾン森林破壊が急速に激増する背景にある。こうしたボルソナロ政権に対して、ノルウェーやドイツ政府はどう動いたか? まず動いたのはドイツ政府だった。ドイツ政府は8月10日にこの基金への資金提供を停止することを表明した(1)。そしてノルウェー政府もすぐにそれに続いた。このようなボルソナロ政権に資金を出すことはさらなるアマゾン破壊につながることを危惧してのことだ(2)。ノルウェー政府は自国の企業にアマゾン破壊につながる投資をしないことを求めている(3)。

 アマゾン森林火災を止める消火作業への緊急支援はしつつも、資金がどう使われるか不明な基金への拠出は止めるという姿勢は高く評価しうるだろう。それだけアマゾン森林が失われることに対して懸念は大きい。

 抗議活動は世界中に拡がり、9月5日には世界各地でボルソナロ政権への抗議行動が取り組まれた(4)。そして9月7日はブラジルの独立記念日。この日には年金改悪、教育費削減、アマゾン破壊を進めるボルソナロ政権を批判する広範なデモがブラジル各地で取り組まれている。

 これに対して、日本政府は何をしているだろうか? G7としての森林火災対策の支援に賛同はしているものの、一方で、8月25日、26日には吉川農水相がわざわざ、この渦中(火中!)の中、ブラジルを訪れて、ブラジルの農務相と農業開発のためのさらなるインフラ作りについて話しを進めているというのだ(5)。このインフラ作りはMATOPIBA地域の農業インフラだろうか、それともセラード地域からアマゾンを通じて大豆を世界に運ぶ経路を整備するためのものだろうか、詳細はまだわからないが、いずれにしてもアマゾンに否定的な影響を与えることは予想しうる。そして、持続できない農業を拡大させ、それに依存する食は未来がない。

 そもそも現在のアマゾンやセラードの生態系を破壊して、大規模農業開発を進めるボルソナロ政権に対して圧力をかけるために世界が批判を強めている時に、進めるような話では決してないだろう。

 残念ながら、このようなケースは歴史上何度も繰り返している。たとえば、南アフリカでの人種隔離政策(アパルトヘイト)をやめさせるために世界が南アに対して経済制裁を加える中、日本は南アとの関係を強め、南アの最大貿易国となった。世界の非難が南ア政府と日本に向けられたこともあった。

 安倍首相が「価値感の共有する国として…」という言葉を外遊のたびに使うのが本当に耐えられなく感じる。果たして日本は民主的な国と相手国の人びとに思われているだろうか、大いに疑問だからだ。日本が世界で起こしているさまざまな問題は影響を受けている当該の国の市民団体の中では自明なことだ。国際会議に行くたびに本当に肩身が狭くなる。日本政府や企業が起こしている問題を日本人の多くが知らないのが現状だからだ。

 本当に世界と価値感を共有して、世界を維持可能な、命を守ることができる社会の構築をしていくためには、現在の日本政府の姿勢がまったく批判されないような状況は変えていく必要がある(6)(7)。

(1) Alemanha vai suspender verba para projetos na Amazônia, diz jornal

(2) Noruega suspende R$ 130 milhões para o Fundo Amazônia

Por que, afinal, Noruega e Alemanha doam recursos para o Brasil? O Fundo Amazônia em 10 perguntas e respostas

(3) Norway Urges Its Companies Not to Fund Amazon Deforestation

(4) We Made Our Voices Heard All Over the World – and We’re Just Getting Started!

(5) 農林水産大臣の海外出張の概要について(ブラジル:第4回日伯農業・食料対話関連)

(6) アマゾン森林破壊と日本政府のあり方の再検討を国会議員に求める

(7) わたしたちにできること

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