RCEPは種子をより企業の所有物にしていく可能性がある。大問題。
11月にも妥結すると報じられているRCEP、東アジア地域包括的経済連携だが、なぜか日本ではあまり騒がれない。TPPは日本の公共圏(食、医療、教育、福祉、水道などなど)を多国籍企業の餌食に供してしまうとして大きな反対の声があがったが、RCEPはもっとTPPよりも危険な条項を含んでいる。
TPP11=UPOV+TRIPS < RCEP=UPOV+TRIPS+TRIPS Plus という感じになるだろうか?
特に食・農の分野で問題になるのがRCEPの中で日本や韓国政府が押している知的所有権を優先させるUPOV条約の義務化とWTOの元で成立したTRIPS協定よりももっと強力なTRIPSプラスの適用。
RCEP参加国はUPOV条約締結を義務付けられると、この条約に基づき、農家の自家採種の規制、企業の作る種子を毎回買うことなどが押しつける法を制定することを迫られる。
TRIPSプラスとは何だろうか? これは1995年WTOと同時に成立した知的所有権に関する協定だが、その後、米国政府はこのTRIPS協定よりもさらに知的所有権の権限を強めたTRIPSプラスを主張し、さまざまな自由貿易協定でこの協定を呑むことを交渉国に求めてきている。
このTRIPSプラスが何が問題なのか? TRIPS協定では植物や動物の特許は除外することができる。しかしTRIPSプラスでは動物や植物での特許が入る。そもそも生命に特許を認めることに対して、反対が強い。たとえばモンサント(現バイエル)は遺伝子組み換え大豆を発明したわけではない。大豆に大腸菌の遺伝子の一部を組み入れただけだ。にも関わらずモンサントはGM大豆の特許を取り、発明者としての独占権を手に入れている。
しかし、生命への特許を認めないとする国は存在する。インドがそうだ。インドでは生命への特許は否定されている。欧州議会は通常育種に特許を認めるべきではないと議決するなど、生命に特許を認めることに対しては批判は大きくなってきている。
この問題は農業だけでなく、特に深刻なのは医療だろう。医療において特許が強化されることによって、患者たちの負担はさらに高まってしまう。そして特許の支払いを求められる南の国の人びとはさらに苦しい状況に置かれることになる。薬の多くが南の国の生物多様性に頼って作られているにも関わらず、それが北の多国籍企業に独占され、その支払いを南の国に求められるという理不尽も存在する。
しかし日本政府はRCEPでこのTRIPSプラスを(末尾の市民団体の声明にあるのだけど、種子の権利を奪うことに必死なのは日本政府。なぜ日本はそのように行動するのか? 国会では議論しているのか?)。これはインドなどアジアの農民の種子を奪うことにつながるだけでなく、種子を特許制度で囲い込むことにもつながりかねない。
今、日本政府は遺伝子組み換え種子だけでなく、通常育種にも特許を認めている。通常育種の種子に特許を認めるということは育成した企業の発明物としてその種子を独占されるということである。しかし、その種子が生まれるには数多くの農民が歴史的に関わってきた。でもその特許においては、その関与はすべて否定されてしまうことになってしまう。種子は企業のもの、という世界になる。さらに生物資源が少数企業に独占される道を開いてしまう。それは今後の世界にとって決して望ましいことではないだろう。
これは回り回って、日本における種子のあり方にも今後、大きく作用していくことだろう。種子の独占を強化するRCEPには反対だ。
(1) RCEPでのTRIPS協定に反対する声明。特に種子の権利を奪っているのは日本だと名指しされている。アジアの国々は日本政府に声を集めている。
CIVIL SOCIETY LETTER ON INTELLECTUAL PROPERTY TO RCEP NEGOTIATORS
Civil Society Letter on Intellectual Property to RCEP Negotiators