フランスでのベトナム戦争のランチハンド作戦(枯れ葉剤作戦)における14企業の責任を問う裁判、フランスの裁判所はなんと棄却(1)。これほど多くの人がTran To Nga(チャン・トー・ガー)さんの訴えに耳を傾け、世界のメディアが注目する中でのこの裁定はがっかり、というところだけれども、当の弁護団は、これだけの大きな問題では裁判所も慎重にならざるをえないでしょう、と理解した上で、控訴するとのことで、要するにこれから始まったというところだろう(2)。
なぜフランスで、と思うかもしれない。ベトナムでも戦争当事国の米国でもない。フランスはベトナムの旧宗主国であり、チャン・トー・ガーさんはフランス国籍を所持してフランスでこの問題を訴えていたということからフランスとなったのだと思うけれども、フランスでは訴訟14社にも入っているモンサントに対して最近ではLassoという農薬で有罪判決、この他にもモンサントに不利な判決をしっかり下している国でもあり、今後の法廷には注目したい。
ちなみに、モンサントやダウ・ケミカルは米国政府にエージェント・オレンジ(もっとも使用された枯れ葉剤)の製造を命令されたわけではなく、巨利を得るために自ら進んで製造し、しかも彼らのバージョンはずば抜けて毒性が高かったのに、その事実は隠されているとGMWatchは指摘している(3)。
このベトナム戦争で枯れ葉剤が撒かれた後、モンサントが“発見”したのがグリホサート(モンサントはグリホサートを開発したわけではない。その当時、グリホサートは配管洗浄液だった。その配管洗浄液を使っていたら、草が枯れることを見つけ、除草剤として使えることをモンサントは発見した。グリホサートはベトナム戦争の枯れ葉剤ではないので要注意)。モンサントの主力商品としてラウンドアップを世界中で売って行く。
しかし、それももはや効かなくなってきた。そこでダウ・ケミカルが効かなくなったグリホサートに混ぜたのがこのエージェント・オレンジの2,4-D(もう1つの2,4,5-Tは使用禁止に。しかし2,4-Dは今でも農薬として通用してしまっている)。こんな古くて危険な農薬を引っ張り出さざるをえないところに現在の化学企業=遺伝子組み換え企業の現状が集約されている。そして、その2,4-Dの散布量が米国で、南米で上がってきている。問題は繰り返される。
だから、ベトナム戦争を再検証することは重要不可欠。その多くの枯れ葉剤を詰んだ爆撃機は日本の米軍基地から飛んでいったことだろう。日本にもこの枯れ葉剤が多く破棄され、危険な状態にあるとも言われている。日本も無縁ではない。
5月15日にはパリでMarch Against Monsanto (Bayer)(4)。画像参照
6年前の記事だけど、チャン・ティ・トー・ガーさんの取り組み、体内からダイオキシンが検出された時のこと、子どもや孫への思いを知る上で貴重な日本語の記事。
「枯葉剤被害者の正義を求める裁判、フランスで始まる」
https://synodos.jp/international/13841/2
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(1) French court dismisses complaint over Agent Orange use in Vietnam War
https://e.vnexpress.net/news/news/french-court-dismisses-complaint-over-agent-orange-use-in-vietnam-war-4275860.html
(2) https://twitter.com/GMWatch/status/1391758852081831936