放射線育種なしにカドミウム対策は可能?

 毎日「あきたこまち」をいただいています。とてもおいしいお米だと思います。しかし、これを放射線育種米に転換してしまう動きが進もうとしています。秋田県は2月24日県議会農林水産委員会で、「あきたこまち」をカドミウムをほとんど吸収しない新品種「あきたこまちR」に2025年以降、全面的に転換することを報告したと報道されています。でも、この報告では「あきたこまちR」が放射線照射によって作られた交配種であることは伝えていません(1)。「あきたこまち」は秋田県が作るお米の7割を超える主力品種です。 “放射線育種なしにカドミウム対策は可能?” の続きを読む

お酒の「ゲノム編集」パブリックコメント

 今度はお酒まで「ゲノム編集」かい? パブリックコメント「酒類分野におけるゲノム編集技術の利用により得られた生物の取扱いについて(案)」に対する意見募集(1)。
 なんで酒類限定で「ゲノム編集」生物についてのパブコメをするのか、理解に困った。すでに「ゲノム編集」生物については農水省、環境省、厚労省がすでに2019年10月に方針を決めてしまっている(国会では何も議論せずに省内の検討会だけで方針を決めてしまった)。それには麹や酵母などの微生物も含まれるだろう。酒だけでなく、味噌、醤油、パンなどの発酵食品もあるのになぜ酒だけ?  “お酒の「ゲノム編集」パブリックコメント” の続きを読む

フィリピン最高裁、遺伝子組み換え稲、ゴールデンライスを止める令状

 朗報:フィリピン最高裁は4月18日に遺伝子組み換え稲であるゴールデンライスと遺伝子組み換えナス(Btナス)の商業栽培を止めるカリカサン令状を発した(1)。
 このゴールデンライスはフィリピンに本部のあるIRRI(国際稲研究所)で開発されていたもので、一時は開発破綻の状態にあったがビル・ゲイツの投資によって持ち直し、すでに2021年に栽培が承認され(2)、商業栽培はすでに始まっていて、学校でもそれが振る舞われているとのこと。この状況に対して、農民と学者の連帯ネットワークNGOであるMASIPAGなどが、この商業栽培の差し止めを求めて訴えていた。
 このカリカサン令状とは健全な環境についての憲法上の権利の保護を提供するフィリピン法に基づく法的救済策とのことで、どこまでの効力があるのかわからないが、法的には止まる根拠ができたことは大きな勝利だと言えるだろう。 “フィリピン最高裁、遺伝子組み換え稲、ゴールデンライスを止める令状” の続きを読む

栄養大崩壊:微量ミネラルを失う食、生態系の崩壊?

 現在、気候危機、生物絶滅危機などの多重危機が進行しており、その根本原因である食のシステムを変えることが必要だと言い続けているのだけど、この多重危機の根幹に栄養危機がある。
 2004年に米国農務省のデータから重要な研究が発表され、それ以降もそれを裏付ける研究が続いているのだけど、農作物からタンパク質、鉄・亜鉛・マンガン・マグネシウムなどの微量ミネラル、ビタミンBやCが1950年と1999年で比べると大幅に減っている、というのだ(1)。微量ミネラルは子どもが成育する上でなくてはならないもの。人だけでなく、家畜などにも大きな問題になる。
 こうした栄養飢餓は気が付きにくい。食べ物は栄養不足になっていても大きく育つからだ。炭水化物の量にはさほどの影響を与えないからとりあえずの大きさに作物は育ってしまう。そして、食べれば血糖値は上がるから人は満腹を感じる。だけど本当に必要な栄養は得られない。 “栄養大崩壊:微量ミネラルを失う食、生態系の崩壊?” の続きを読む

「放射線育種」は品種改良ではない

 放射線を照射して新品種を作ることが「放射線育種」とよばれているが、この言葉自体がイデオロギーの産物と言わなければならない。いつの間にか、放射線を当てることを「品種改良」と考えるようになってしまう。しかし、遺伝子操作は品種改良技術ではない。 “「放射線育種」は品種改良ではない” の続きを読む

お米のほとんどが放射線育種米に?

 放射線を照射して突然変異したお米、食べたいですか? 育てたいですか? ここ数年で日本のお米の多くが放射線かけて作った品種に代えられようとしています。
 あまりに重大な問題なので、2月末から慎重に情報収集してきました。2025年から少なくとも2つの県で主力品種が放射線育種米に切り替えられ、他の道府県でもその動きが進む可能性があります。 “お米のほとんどが放射線育種米に?” の続きを読む

新たな遺伝子操作農業へ? 農業資材の遺伝子操作

  今や、農作物の成長を化学物質でコントロールする時代から微生物でコントロールする時代に移ろうとしている、と言えるのかもしれない。いや、それはずっと人類がやってきた有機農業じゃないか、と言えれば一番いいのだけど、話はかなり怖ろしいものになる。つまり、遺伝子操作した微生物でそれをやろうというのだから。
 
 植物と微生物の共生にこそ、大きな可能性がある。化学物質でそれを代替させる工業型農業こそが土壌の劣化、気候変動、農薬依存などをもたらしてきた。だからそこから脱皮し、微生物との共生をどう回復できるか、生物多様性の回復、生態系の回復は今後の人類の生存にも関わる大きな課題であるはずだ。
 
 もし、そうした回復に技術の焦点が行くのであれば望ましいこと、と言いたいのだが、実際に進みつつあるのは、微生物を遺伝子組み換え、「ゲノム編集」、さらには合成生物学によって操作したものを用いる農業に変えようとする動きである。 “新たな遺伝子操作農業へ? 農業資材の遺伝子操作” の続きを読む