栄養大崩壊:微量ミネラルを失う食、生態系の崩壊?

 現在、気候危機、生物絶滅危機などの多重危機が進行しており、その根本原因である食のシステムを変えることが必要だと言い続けているのだけど、この多重危機の根幹に栄養危機がある。
 2004年に米国農務省のデータから重要な研究が発表され、それ以降もそれを裏付ける研究が続いているのだけど、農作物からタンパク質、鉄・亜鉛・マンガン・マグネシウムなどの微量ミネラル、ビタミンBやCが1950年と1999年で比べると大幅に減っている、というのだ(1)。微量ミネラルは子どもが成育する上でなくてはならないもの。人だけでなく、家畜などにも大きな問題になる。
 こうした栄養飢餓は気が付きにくい。食べ物は栄養不足になっていても大きく育つからだ。炭水化物の量にはさほどの影響を与えないからとりあえずの大きさに作物は育ってしまう。そして、食べれば血糖値は上がるから人は満腹を感じる。だけど本当に必要な栄養は得られない。
 
 成長を人為的に早めた生物を調べると必要な栄養が欠ける傾向になる。ある研究は人為的に早く成長させた藻を食べたプランクトンは栄養不足で飢えてしまうと指摘する(2)。そのプランクトンを食べた魚はどうなるか? こうした栄養不足の連鎖が進めば「栄養大崩壊」が起きて、生態系が崩壊してしまうかもしれない。

 この危機が進行する中、さらに遺伝子操作して成長を早める生物の開発が続く。実際に遺伝子組み換えサーモンは栄養価の点で大きな問題が指摘されている(図参照)(3)。必要な食とは単なるカロリーだけでなく、微量ミネラルなどを含むバランスのある栄養素があるものである。


 「ゲノム編集」マダイやトラフグの栄養は果たしてどうだろうか?
 
 この栄養危機の警鐘として読まれるべき2004年の研究が出てから20年近くたった。しかし、今なお「食べる部分」を拡大させる技術ばかりに政府が公的資金をつぎ込んで推進しているというのはあまりに時代錯誤ではないか?
 
 栄養豊かな食を作る、ためにはまさに生態系の豊かさを守れる農畜水産業が必要になるだろう。有機農業・アグロエコロジー、リジェネラティブ・アグリカルチャー(環境再生型農業)などと呼ばれる農業実践では単位面積あたりの栄養量で見た場合、慣行農業を上回ることが可能になる。(4)
 この多重危機の克服のために必要なのはまさにそうした農業への転換であり、遺伝子操作技術が解決策となることはありえない。
 
 図は昨日(2023年4月21日)、日本消費者連盟・遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーン主催のオンライン学習会のために作った資料の1ページ。

(1) Fruits and vegetables are less nutritious than they used to be
https://www.nationalgeographic.co.uk/environment-and-conservation/2022/05/fruits-and-vegetables-are-less-nutritious-than-they-used-to-be

The great nutrient collapse
https://www.politico.com/agenda/story/2017/09/13/food-nutrients-carbon-dioxide-000511/

(2) Vanishing Nutrients
https://blogs.scientificamerican.com/observations/vanishing-nutrients/

(3) Block Corporate Salmon
https://www.uprootedandrising.org/blockcorporatesalmon/

WE DON’T SOURCE GENETICALLY ENGINEERED SALMON.
https://drive.google.com/file/d/1K1IEgBROPk1eIXjRrD8_vRykBJJpS0Se/view

(4) How modern food can regain its nutrients
https://www.bbc.com/future/bespoke/follow-the-food/why-modern-food-lost-its-nutrients/

SOIL RESTORATION: 5 CORE PRINCIPLES
https://www.ecofarmingdaily.com/build-soil/soil-restoration-5-core-principles/

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