米がない「食料危機」?

 何か音を立てて崩れている気がする。「米がない」。しかも生産量は十分あるのに。なぜ、そんな事態が起きたかということに関してはいくつも記事がでているので、それに付け加えようとは思わない。だけど、その記事には書かれない、問われるべきことがどうしてもまだあるので、そのことを書いておきたい。 “米がない「食料危機」?” の続きを読む

リオグランデドスル水害、ブラジルの食料危機に?

 リオグランデドスル州の被害は想像超えて、大きな問題になってしまいそうだ。大規模農業が盛んな地域だがセラード地域が輸出向けの大豆生産が多いのに対して、リオグランデドスル州ではブラジルの稲の7割を占め、それは国内向け。収穫が進んでいたものの、それは終わっておらず、国内の食料事情に大きな影響を与えそうだ。
 そして、この地域はアグロエコロジーによる米生産の半分を生産する地域。1万トンの有機米が失われた可能性がある。この有機米の多くはMST(土地なし農業労働者運動)に属する農民たちが作っている。もともと土地を持たない農業労働者が農地改革によって土地を得て、農薬も化学肥料も使わないアグロエコロジーによって生産を拡大してきた。そしてそのお米は都市部のホームレスにも提供されてきた。MSTはラテンアメリカ最大の有機米生産団体となっている。 “リオグランデドスル水害、ブラジルの食料危機に?” の続きを読む

ヨーロッパと日本のタネ:どう違う? ドキュメンタリー“SEEDS OF EUROPE”を見て

 世界でタネが焦点になっていることを5月4日に長い投稿でまとめた。ヨーロッパ、EUでは2つの動きがあることを伝えた。一つは有機農家のタネの促進をめざす方向、もう一つは「ゲノム編集」の導入に向けた動きだ。
 
 でも文字ではなかなか伝わらない。前者の有機のタネに関するとてもいい短いドキュメンタリーがある。“SEEDS OF EUROPE”(34分)。アイルランド、ルクセンブルク、フランス、イタリア、オーストリアとチェコ共和国の農家を訪れ、タネの問題を浮き上がらせる。 “ヨーロッパと日本のタネ:どう違う? ドキュメンタリー“SEEDS OF EUROPE”を見て” の続きを読む

COP28は最初の食のCOPに!? 食を変えるこそ気候危機対策の柱

 気候危機に対処するためのCOP28(国連気候変動枠組条約第28 回締約国会議)が予定された会期の終わりに近づいている。気候危機というと化石燃料をどうするか、ということが大きな焦点だ。石油や石炭消費をどう止めるか、これが重要であることは疑いない。けれども、近年のCOP会議で焦点の1つになり始めているのが食・農業である。なぜかというと食のシステムは温暖化効果ガスの3分の1を直接排出、間接に排出しているものも含めるとほぼ半分を占めるとも言われる。つまり気候危機を解決するには食を変えなければならない。
 またたとえ排出を減らしたとしてもすでに大気は温暖化効果ガスで満ちており、気候危機は止まらない。大気中に放出された温暖化効果ガスは地球の気候を不安定にし続けるからだ。しかし、世界大で生態系を守る農業に転換することで地球上の最大の炭素の保存庫である土の力を取り戻し、炭素を蓄積する力を回復させることで、食は気候危機を緩和させていくこともできる。だからこそ、食の問題は気候危機対策の中心に躍り出ざるをえないのだ。 “COP28は最初の食のCOPに!? 食を変えるこそ気候危機対策の柱” の続きを読む

コオロギ食・工業的昆虫食推進にノー

 コオロギ食をめぐってSNSが騒がしい。イナゴなどの伝統的昆虫食と違う問題がそこにある。岸田首相が予算委員会で推進宣言したフードテックだが、その推進ビジョンのロードマップによるとすでに昨年にコオロギの生産ガイドラインは完成していて、今後、他の昆虫のガイドラインが作られていくことになっている。
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細胞農業、工業的昆虫食、代替タンパク産業は不要

 国会で細胞培養肉などの細胞性食品・フードテックに関する質疑が22日に行われ、岸田首相は「世界の食料問題の解決に貢献する取り組みを後押ししていかなければならない」と語った(1)。
 
 世界の食料問題というけれども、何が問題なのかをすり替えればさらなる問題が作られる。世界は代替タンパク(プロテイン)でもちきりだ。いわく、細胞培養肉、代替肉、さらには昆虫食、遺伝子操作した魚の養殖…。
 
 なんでこんな騒ぎになっているのか?
 背景にあるのはこれまでのタンパク質ビジネスの頂点にあったファクトリーファーミング(工業的集約型大規模畜産)が限界に達して収益や今後の成長が見込めなくなった、ということ。気候変動効果ガスを大量に産出し、水や空気も汚染し、薬が効かない耐性菌の発生源となるファクトリーファーミングに世界は厳しい目を向けだした。そして、環境的にももはやそのような生産を拡大させることには限界が見えてきた。 “細胞農業、工業的昆虫食、代替タンパク産業は不要” の続きを読む

気候危機を止める食と農:COP27を前に国際的市民と自治体の連帯

 気候危機がいよいよ深刻化する中、COP27(国連気候変動枠組条約第27回締約国会議)が人権侵害の懸念の大きいエジプトで始まった。気候危機を作り出す真犯人が救世主の振る舞いをしていることを見抜く必要がある。そして、食を地域で変えることで気候危機を克服することができることを多くの人が世界で認識し始めている。 “気候危機を止める食と農:COP27を前に国際的市民と自治体の連帯” の続きを読む

大地を再生するリジェネラティブ・アグリカルチャーの映画

 世界の大きな底流。辻信一さんの言葉で言えば「反生命」から「生命」への流れ。リジェネラティブ・アグリカルチャー(大地再生型農業)の大きな進展を描いた映画。
To Which We Belong
 この映画はそのリジェネラティブ・アグリカルチャーが米国や世界の農業を変え、農業だけでなく、漁業や社会までも変えるさまを描き出している。推薦文を書かせてもらったのだけど、そこで一言、批判めいたことも書いてしまったので、簡単に触れておきたい。 “大地を再生するリジェネラティブ・アグリカルチャーの映画” の続きを読む