米騒動とバイオテクノロジー

 危機とはおそろしい。人びとの思考能力を奪い、平常時ではありえないことが堂々と、あからさまに実行されてしまうから。
 米騒動を機に、お米とは縁もなかった巨大企業がお米を握ろうとしている。そして地域のお米屋さんは排除。急激な米価高騰で「巨大企業に任せた方が安く、誰もが買えるからいいんじゃないか」と警戒感が薄れてしまう。でも、小さな流通業が廃れて、大企業しか扱えなくなり、競合他社がなくなれば、もはや決定権は巨大企業が握る。私たちの食の決定権は名ばかりとなって、価格や何を売るか、決めるのは巨大企業の手に握られる。
 
 流通と同時に生産の現場はさらに危うい。実はモンサントは「とねのめぐみ」という品種をもって、日本の稲に参入を試みたことがある。「とねのめぐみ」は遺伝子組み換え品種ではない。「コシヒカリ」と「どんとこい」を交配させ、従来の品種改良で育成した品種。でも、彼らは日本の稲から撤退した。彼らを撤退させたのは水田だった。 “米騒動とバイオテクノロジー” の続きを読む

合成生物学を使った人造生物肥料に、「ゲノム編集」作物が経済安保?

 解決策があることはわかっている。でも、日本政府はその解決策を完全に無視して、企業の儲けになる、その場しのぎの方策ばかりに突っ走る。エネルギー政策しかり、そして農業政策しかり。その結果、このままでは日本はより深刻な事態に向かおうとしている。
 
 共同通信は政府が経済安全保障推進法に基づき財政支援を通じて育成する「特定重要技術」の対象に肥料生産に関する先端技術を追加したと報道した。この先端技術とは、化学的手法による肥料生産や少ない肥料でも育つ「ゲノム編集」作物なのだそうだ。 “合成生物学を使った人造生物肥料に、「ゲノム編集」作物が経済安保?” の続きを読む

2025年、世界では止まった有機農業バッシングに日本はどうなる?

 2024年の振り返り。世界では2020年〜2024年にかけて有機農業バッシングが猛威を振るった。でも、世界ではそのバッシングの中でも有機農業はがっしり根をはり、バッシングを跳ね返しつつある。光が見えたのが2024年だったかもしれない。
 一方、来年以降、周回遅れの有機農業バッシングが日本を襲う可能性が高いと危惧する。有機農業は気候危機、生物絶滅危機などの多重危機の不可欠な解決策。どう攻撃から守れるか、世界の動きから考えてみたい。 “2025年、世界では止まった有機農業バッシングに日本はどうなる?” の続きを読む

化石燃料でできた食を変えよう!

 気候危機、生物絶滅危機などの多重危機の同時進行を進めている原因を追求していくと、世界のほんのわずかな企業が推進する産業モデルがこの多重危機を加速させ、そのモデルが世界中に各国政府の政策によって広げられている問題にぶちあたる。その勢力の一つが化学肥料企業。

 この状況に対して、FUEL to FORKという新しいキャンペーンが始まった。私たちの食は化石燃料でできている! 食べながら気候変動を引き起こしている。だから、食べものを変えれば多重危機も回避できる。まずは食べものから¹。 “化石燃料でできた食を変えよう!” の続きを読む

AIロボット制御遺伝子操作農場拡大中ースマート農業の行き着く先

 実験室の中で遺伝子操作していた時代から、今後は農場自身を遺伝子操作する時代に入った。種子を支配することで食を支配しようとした遺伝子組み換え企業は、それを超えて、農場全体をデジタル情報化し、AIを使って生産をコントロールするAI企業として農業生産を直接支配する企業へと転換しつつある。 “AIロボット制御遺伝子操作農場拡大中ースマート農業の行き着く先” の続きを読む

有機認証は誰のもの?

 世界で気候変動が激しさを増し、生物絶滅も想定を超えたスピードで進んでいる。多重危機が同時進行する私たちの世界。この危機を作り出している主因の一つが工業型の食のシステム。この変革はこの危機を克服する上で避けて通れない。
 その一つの重要な指標になるのが有機認証である。有機認証というと、日本ではあまり注目されない。「いや、有機認証なんて不要」、そんな言葉も飛び交う。有機認証が工業型の食のシステムから食を守る上で大きな準拠枠となっていることはほとんど知られていないだろう。認証を取る上ではさまざまな問題もあって、取らない人もいる。認証を取るか取らないかはひとまず置こう。食を守る最後の砦として、有機認証をどう守るかを考えなければならないことをぜひ知ってほしい。 “有機認証は誰のもの?” の続きを読む

『日本の種苗政策とUPOV』について

 種子法廃止って何だったの? 種苗法改正はどうして行われたの? なんで野菜のタネはほとんど輸入なの? なぜ在来種が危機的なのに支援がないの? 「ゲノム編集」食品は農業をどう変えてしまうの? 来年から始められる重イオンビーム放射線育種米はどんな変化を日本の食にもたらす可能性があるの? 日本政府がモンサント法を他の国に押しつけているって本当? なんで報道されないの? ばらばらの問題としてではなく、まとめて点と点をつなげて考えると、そこにどうしていくべきか、大きな課題が浮かび上がってきます。 “『日本の種苗政策とUPOV』について” の続きを読む

食料・農業・農村基本法改正案は飢餓輸出を招く

 食・農業の憲法と言われる食料・農業・農村基本法改正案が昨日衆議院通過。なぜ、農業が限界状況迎えているのに、政府は抜本的な手を打たないか、要するに日本という国が米国へのコバンザメ国家で、米系多国籍企業へのコバンザメ企業が政治を仕切っているから。 “食料・農業・農村基本法改正案は飢餓輸出を招く” の続きを読む