米がない「食料危機」?

 何か音を立てて崩れている気がする。「米がない」。しかも生産量は十分あるのに。なぜ、そんな事態が起きたかということに関してはいくつも記事がでているので、それに付け加えようとは思わない。だけど、その記事には書かれない、問われるべきことがどうしてもまだあるので、そのことを書いておきたい。 “米がない「食料危機」?” の続きを読む

ブラジルの反飢餓政策の復活:ホームレス運動による「連帯キッチン」が政策に

 食と政治の関係、もっともドラマチックに表現しているのがブラジルかもしれない。ブラジルは飛び抜けた極少数の金持ちが過半数の農地を独占する一方で、多くの飢餓状態の人びとが苦しんでいた。1993年以降、市民による反飢餓運動が全国に広がり、ついに2001年、労働者党の大統領が選ばれる。そして生まれた飢餓ゼロの政策と小規模家族農家を支援する政策。飢餓人口は急速に減少し、2014年、国連の飢餓マップからブラジルは消えた。 “ブラジルの反飢餓政策の復活:ホームレス運動による「連帯キッチン」が政策に” の続きを読む

根を張るブラジルのアグロエコロジー、一方、日本の統一地方選は?

 政府が人びとの望まない政策をどんどん進めていく。こんな時にどうしていけばいいのか、とても参考になる取り組みがある。それがブラジルのアグロエコロジー運動。アグロエコロジーとは生態系を守り、その力を活用する農業に関する科学であり、そうした食のあり方をめざす農家の実践や市民の社会運動でもある。
 これまでブラジルのアグロエコロジーを支えてきた柱は学校給食(PNAE)と食料調達政策(PAA)だった。政府が買い付けを保障するから、農家が現金収入を確保できる。市場に買い叩かれなくて済む。でも、極右大統領が誕生し、これらの予算を大きくカットした。新型コロナウイルスの蔓延による失業、コメや小麦など輸入穀物の暴騰という中、この政策により、飢餓層が急増する。そして、この極右大統領は空前の勢いで農薬を新規承認。現在、ブラジルで承認されている農薬の半数を占めるまでになった。海外では禁止されている農薬が続々と承認された。種苗企業は遺伝子組み換え企業によって買収され、大豆やトウモロコシ、コットンなどは遺伝子組み換え種子ばかり。
 このような逆境の中でも、ブラジルのアグロエコロジー運動は地域に根を張ることで生き延びた。地方自治体が予算を出し、地域のアグロエコロジー生産をバックアップする、そんな例がブラジル全土で487存在するという(1)。その例を1つあげてみよう。 “根を張るブラジルのアグロエコロジー、一方、日本の統一地方選は?” の続きを読む

食は権利、すべての人に健康にいい食を! ブラジルのホームレス運動から

 もう過ぎてしまったけれども、ブラジルでは1993年の反飢餓キャンペーンがブラジル全土を巻き込む巨大な運動になって以来、毎年、クリスマスになると、餓えのないクリスマスというキャンペーンが取り組まれる。
 カトリックが多いブラジルではクリスマスにはほとんどの店が閉まる。この日は家族と共に暮らす日なのだ。いっしょに過ごす家族を失ってしまった人にとってはつらさが募る日でもあり、自殺者も多くなると聞く。
 新型コロナウイルスはブラジルで70万人の命を奪う猛威を振るっているが、その脅威は失業と食料高騰によって、特に貧困層を直撃している。ブラジルは米国と世界一を争う農産物輸出国だが、肝心の主食である小麦は輸入に頼り、お米も輸入が増えている。新型コロナウイルス蔓延以降、輸入価格は高騰し、貧困層を直撃している。労働者党政権の後のボルソナロ政権では巨大地主を優遇する政策に転じ、小農からの食料買い上げや学校給食への予算もカットし、労働者党政権下で激減していた飢餓層がこの4年間で急速に拡大してきた。労働者党政権の下でほぼ根絶しかけた飢餓人口は2000万人近くに膨れあがっているという指摘もある。
 
 こんなピンチでもチャンスに変えるのがブラジルの民衆運動と感心するのだけど、ブラジルのホームレス労働者運動(MTST)はCozinha Solidária(連帯キッチン)という取り組みを2年前に始めた(1)。現在、ブラジル各地に作られ、現在31箇所。人びとの寄付を原資に無償の食事が貧困地域の人びとに提供されている。すでに累計100万食が提供されたという。オンライン寄付で毎月15レアル(400円弱)などの少額寄付を募っている(2)。 “食は権利、すべての人に健康にいい食を! ブラジルのホームレス運動から” の続きを読む

年金とアマゾン破壊の関連を問う

 アマゾン森林がもう終わってしまうかもしれません。膨大な生物多様性を保持するアマゾン。世界の生態系にも大きな影響を与える森林がこのままではなくなり、サバンナや砂漠へと変わっていくかもしれません。そうなれば、気候変動はもちろん、ここにしかいない生物は絶滅し、それと共に未曾有の感染症に人類は脅かされることでしょう。その破壊の火に油を注いでいるのが日本の年金なのです。
 その破壊の実態を現地の市民団体が明らかにした調査を元に、調べ、日本との関わりを明らかにしたレポート『年金とアマゾン破壊の関連を問う~大手牛肉加工企業への資金提供~資金運用体制の抜本的見直しを』をFair Finance Guide Japanから出しました(この企画提案、執筆・編集の一部を印鑰が担当しました)。ぜひ、ダウンロードして読んでいただきたいです。拡げていただけるとありがたいです。 “年金とアマゾン破壊の関連を問う” の続きを読む

統一協会問題と全米祈祷朝食会ーザ・ファミリー

 一連の「統一協会問題」の曝露を見ながら、このドキュメンタリー映画のことを思い出していた。
『ザ・ファミリー 大国に潜む原理主義』(1)。
 全米祈祷朝食会を通じて、国会議員はもちろん、共和党や民主党の大統領にも、いや世界の指導者にさえも影響力を及ぼすダグ・コー率いる「宗教団体」の活動を追ったものだ。この「宗教団体」が掲げる主張は原理主義と言われるが、一見、何気ない家族や愛という当たり前の概念が繰り返されるだけ。統一協会のような極端な表現ではない。しかし、その内実は、性的な役割分業を決めつけ、支配的価値観をじわじわと強化する、結果としては白人男性を中心とした政治権力の維持、原理主義的と言わざるを得ないような保守的な価値観へと社会を閉じ込めていく。 “統一協会問題と全米祈祷朝食会ーザ・ファミリー” の続きを読む

アマゾンを破壊する公的資金

 世界でもっとも生物多様性に富むアマゾン、セラード地域の破壊が急ピッチで進む。それに油を注いでいるのは私たちの年金を含む世界の金。油が注ぎ込まれ続ければアマゾンの森林は燃え尽きてしまう。今、その投融資に待ったをかけようという声が世界で高まっている。 “アマゾンを破壊する公的資金” の続きを読む