アマゾン破壊のスピードが加速し、止まらない。その理由の1つはその破壊を支える資金が世界中から流れ込み続けているためだ。その主要な資金源が年金であり、その中で日本が占める割合は実は大きい。
どんな形で年金が使われるのか? たとえばブラジルでは古くから地域の共有地として地域の人びとの生活を支えてきた森や土地が突然、私有地として登録され、売りに出される。その土地を大土地所有者が買い取り、遺伝子組み換え大豆などの大規模農場へと変えてしまう。それが年金からの融資で可能になる。人びとの生活は成り立たなくなり、都市のスラムなどへの難民へと化す(1)。
もし、そこに鉱山資源があればさらにそこに先進国企業が直接入り込む。本来、違法な売買だが、こうした開発を後押しする政権の下ではほとんど規制がかからない。
なかでも日本の年金がアマゾンを破壊しているという告発がブラジルの市民団体によって行われている。この告発では日本の年金がアマゾンを破壊している食肉企業3社に投資されていることを示している(2)。
森林破壊だけでなく、公共財や公共サービスと言われていたさまざまな分野がターゲットになっている。たとえば水道がそうだ。リオデジャネイロ市の水道はカナダの年金が入って民営化された。ブラジルの資源開発は半官半民のペトロブラスが仕切り、その利益は社会保障の財源にすると言われていたが、それも民営化されてしまった。ここでも世界の年金が使われている。公共財や農業などの基本的な産業を「金融化」してしまうことで、年金までもが環境破壊、人びとの生活破壊に使われてしまうことになる。
狙われるのは自国の公共サービスも含まれる。カナダは医療サービスの民営化が進んでいるが、ここでも医療を民営化するために年金が使われている。そして医療の質が格段に落ち、人びとの暮らしを脅かしている。果たして、日本ではどうだろうか?
本来、年金は人びとの生活を守るための制度であるのに、なぜ、このように環境を破壊し、人びとの生活を脅かすために使われてしまうのか?
この問題を世界各地の市民団体が共同で実態を共有し、対応策を討議するオンラインセミナーが5月12日(3)と6月9日に開催された(4)。今でもその録画を見ることができる。
チリでは年金制度問題で大きな運動が生まれ、抜本的な改革に向けた取り組みが始まっている。なりふり構わない年金の投融資のあり方を制約すべきだという声は国際的にも高まっている。
カナダでは新型コロナウイルスの対応が民営化された医療施設でひどく、命を落とす人が多くでる悲しい結果になった。その施設を運用する民間企業Reveraへの融資を止めるキャンペーンを行ったところ、大きく広がり、結局この企業は医療事業から撤退することになったという。年金が大きな問題となっていることは多くの人が知るところとなってきた。
年金は人びとの生活を守らなければならない。高配当を求めて、環境を破壊するような使われ方を許すことはあってはならない。それは結局は将来の世代の生活を脅かすことになるのだから。チリでは根本的な改革議論が進み、政府も対応に向けて動いている。高齢化で上回る日本はチリ以上に根本的な改革が不可避であるはずだ。日本の年金。かつて国会もマスコミも賑わしたが、記録の紛失問題に終始し、そしてうやむやのままに終わっている。その運用のあり方を含め、抜本的な改革に向けた議論が必要だろう。
(1) Farmland assets: International finance and the transformation of Brazil’s agricultural lands
https://www.farmlandgrab.org/30975
(2) オランダと日本の年金がアマゾン森林を破壊する(日本語訳) PDF
https://project.inyaku.net/wp-content/uploads/2022/05/%E5%B9%B4%E9%87%91%E3%81%8B%E3%82%99%E3%82%A2%E3%83%9E%E3%82%BD%E3%82%99%E3%83%B3%E3%81%AE%E7%A0%B4%E5%A3%8A%E3%82%92%E5%8A%A0%E9%80%9F.pdf
(3) 前回、5月12日の第1回セミナー報告の投稿(日本語)
https://project.inyaku.net/archives/6809
(4) RESISTING PENSION FUNDS CAPITALISM – PART 2
https://www.facebook.com/watch/live/?ref=watch_permalink&v=484085696810269