アマゾンを破壊する公的資金

 世界でもっとも生物多様性に富むアマゾン、セラード地域の破壊が急ピッチで進む。それに油を注いでいるのは私たちの年金を含む世界の金。油が注ぎ込まれ続ければアマゾンの森林は燃え尽きてしまう。今、その投融資に待ったをかけようという声が世界で高まっている。
 
 特に問題視されているのがブラジルの3大食肉企業、JBS、Marfrig、Minervaへの投資。なかでもJBSは現在、欧米企業を買収し、世界一の食肉企業となっている。もっともこれらの3社はブラジル企業というよりはすでに無国籍化しており、たとえばMinervaはブラジル以上にサウジアラビアからの株によって支えられている(1)。
 
 これらの企業への投資は高配当が得られるということで、BlackRockのような国際的な資産運用会社から日本の年金を含む公的資金や小規模投資家の資金もつぎ込まれている。しかし、アマゾン森林破壊事業が高配当になるのはそもそも違法な行為を見過ごすブラジル現政権のおかげであり、もし法令違反がしっかり摘発されれば事業の存続すら危うくなり、その投資は水の泡に変わって当然のものである。

 ここで行われていることはどんなことなのか、もう一度、確認したい。世界でもっとも生物多様性に富むサバンナと言われるセラード地域で現地の住民の農地も共有地も奪い、森林を破壊して、遺伝子組み換え大豆・トウモロコシの巨大な農地を作る。この地域で行われていた放牧地がさらに生物多様性の宝庫アマゾン地域へと移動する。そのためにアマゾン森林が破壊される。セラードでの住民追い出しも違法だが、見逃され、アマゾン森林破壊も当然、犯罪行為だが、それを摘発すべき行政機関(IBAMA)をボルソナロ政権は壊滅的にその予算を減らしてしまった。犯罪行為を行っても検挙されない。
 また、その破壊作業は別働隊が行い、検挙されたとしても検挙されるのはその別働隊。これらの食肉企業は直接手を下さないので、一連の犯罪行為の中で、これらの3社の責任が問われることはまれになってしまう。こうして3社は世界から資金を集め続け、アマゾン・セラードは破壊が加速するということになる。
 
 世界銀行グループの一機関である国際金融公社(IFC)は4大穀物メジャーと呼ばれるルイ・ドレフュス社に2億ドルの融資をしようとしている。この融資はブラジルのセラードにさらなる巨大な遺伝子組み換え大豆畑を作り、アマゾン森林の破壊を加速し、超過密で育てられる工場型畜産(ファクトリーファーミング)を支えることになる。気候危機を加速させ、そして排除される人びとは飢餓に直面する。この融資は気候危機を止めるためのパリ合意にも違反する(2)。
 
 このような開発が急速に進んだ2016年以降、ブラジルの食料事情は急速に悪化し、飢餓に苦しむ人びとの数は急増しており、2020年の1910万人から今年3310万人へと激増している(3)。ブラジルへの食への投資が大規模に拡大する中で、飢餓人口が増えているというのは、今、起きていることを象徴している。

食料保障状況青は食料が確保できている人、橙色は食料確保がやや困難、紫は食料不足が深刻な人たち(IAとは Insegurança Alimentar=食料不安定)
食料不足の実態。赤は深刻な欠乏状態、黄色は軽微な欠乏状態、橙色はその中間。深刻な欠乏状態の人が急速に増加している。上記2つの資料はどちらも Mesa Temática “Muitas fomes no Brasil: Reflexões a partir dos inquéritos VIGISAN da Rede PENSSAN” ocorrida no âmbito do V ENPSSANから
ブラジルの食料状況青が食料が足りている人たち、黄色がやや食料不足、紫が深刻な食料不足。社会の大半の人が食料不足となっている。https://olheparaafome.com.br/

 IFCなどの公的な機関は人びとの食料保障のために融資すべきであって、それを破壊するファクトリーファーミングへの融資を止めることを求める世界150以上の市民団体がIFCに公開書簡を送っている。日本からはアニマルライツセンターが署名している(3)。
 
 投資している人は投資先を十分考えてほしい。投資してなくても年金がこうしたところに使われたら、知らないうちにアマゾン破壊に加担していることになる。年金制度改革につなげる必要がある。
 
(1) Foreign capital powers Brazil’s meatpackers and helps deforest the Amazon

Foreign capital powers Brazil’s meatpackers and helps deforest the Amazon

(2) Public Development Banks Must Stop Financing Factory Farming

Public Development Banks Must Stop Financing Factory Farming

(3) No fim de 2020, 19,1 milhões de brasileiros/as conviviam com a fome. Em 2022, são 33,1 milhões de pessoas sem ter o que comer.
https://olheparaafome.com.br/

(4) IFC proposed loans to Louis Dreyfus Company Brazil to support the purchasing of soy and corn: Project 44281 (PDF)
https://foe.org/wp-content/uploads/2022/06/Final-Letter-to-IFC-to-Oppose-LDC-Loan_EnglishSpanishPortuguese-235signatories-6.9.pdf

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