CRISPR-Cas9による「ゲノム編集」が危険すぎるわけ

 「ゲノム編集」でもっとも使われているCRISPR-Cas9、やはり医療や食品開発に使うには危険過ぎると言わざるを得ない。
 
 政府や推進企業はCRISPR-Cas9は「正確に狙った遺伝子だけを編集できる技術」として問題を認めようとしていない。狙っていない遺伝子が破壊されてしまうオフターゲットの問題も、オフターゲットが出ていないことを確認している、として問題ないとしている。

 しかし、狙った通りの遺伝子を破壊できたとしても、そこにさまざまな想定外の変異が生じることがあることがすでに報告されている。大量の遺伝子破壊、大量の遺伝子の挿入、遺伝子の入れ物である染色体が切れてしまう染色体破砕が起きるケースが報告されている。それが想定した遺伝子であろうとなかろうと、この大量の遺伝子の破壊あるいは染色体破砕は確率的にはそう高くないとしても確実に起きている。だからこれは人間のセラピーにはとても使えない、という判断にならざるをえない。 “CRISPR-Cas9による「ゲノム編集」が危険すぎるわけ” の続きを読む

「ゲノム編集」無規制の世界化が目指すゴールとは?

 「ゲノム編集」食品を無規制に流通させていい、という方針は米国が作り出し、日本が追従したものだが、肝心の米国がずっこけてしまったので、日本の突出振りが目立つ結果となってしまっていたが、ここに来て、世界で急に「ゲノム編集」食品の規制突破の動きが本格化している。安全性が確かめられたからとかではなく、突出している国の好きにさせてはならないとばかりに遅れちゃまずい、という馬鹿な競争がその原因だ。 “「ゲノム編集」無規制の世界化が目指すゴールとは?” の続きを読む

キーストーン遺伝子の発見:失えば生物絶滅も(「ゲノム編集」規制が不可欠なもう1つの理由)

 キーストーンという言葉がある。文脈によって印象が変わってしまうけど、ここでは生態系を支える要石という意味で考えてほしい。たとえばよく知られるのは海におけるサンゴ。サンゴは海洋生物の4分の1を直接支え、間接的に支えるものを入れれば4割を支えるという。そのサンゴは海の中の0.1%にしか存在しない。サンゴが失われれば多くの海の生物が死滅する。サンゴは海の生物を支えるキーストーンだ。
 遺伝子の中でもキーストーンと呼ぶべきものがあることが研究によって判明した(1)。その遺伝子がなくなると、周辺の生物の絶滅という事態を生んでしまうというのだ。つまり、その遺伝子は周辺の生態にとってキーストーンになっていることになる。 “キーストーン遺伝子の発見:失えば生物絶滅も(「ゲノム編集」規制が不可欠なもう1つの理由)” の続きを読む

英国政府が「ゲノム編集」生物緩和法案提出も市場は冷ややか

 英国政府が5月25日に「ゲノム編集」生物を規制せずに流通可能とする法案を出し、来年以降、英国のスーパーマーケットで変色しないマッシュルームやビタミンDを強化したトマトなどの「ゲノム編集」食品が売られるようになると一斉にマスコミが報道しだしている(1)。しかし、この決定が英国市民の圧倒的多数の声を無視して出されていること、そして、何より英国のスーパーがまったく積極的でないことはしっかりと見ておくべきだろう。結局、これでは「ゲノム編集」産業は簡単には進まないことが明らかだ。 “英国政府が「ゲノム編集」生物緩和法案提出も市場は冷ややか” の続きを読む

Omnigenics(オムニジェニックス)の理解は今後の鍵

 なぜ「ゲノム編集」や遺伝子組み換えでは画期的な品種が作れないか、生命の遺伝子発現の仕組みを知ることが重要になる。
 「ゲノム編集」や遺伝子組み換えの遺伝子工学においては、1つの遺伝子は1つの機能を持つ。だから、生命の機能をバラバラの部品のようにして、それを組み立てる工学モデルを作る。合成生物学ではすでに自動車の部品のように特定の機能を持つパーツまでが作られている。それを組み合わせれば合成生物のできあがりとなる。ただ、その工学的発想で作れるのは単純な合成生命に限られる。この発想は半世紀前、遺伝子が発見された頃、考えられた古いもので、現在、研究が進む実際の遺伝子発現においては、この想定とはまったく違ったことが起きていることがわかってきている。 “Omnigenics(オムニジェニックス)の理解は今後の鍵” の続きを読む

世界を危うくする「ゲノム編集」生物の無規制政策

 憂慮すべき動きが連続する。EUが来年に向けて「ゲノム編集」生物の規制なし放出を認める方向に動き出したが、カナダ政府は先週、米国同様、2ヶ月のパブリックコメントの後に、多くの市民の反対を無視して「ゲノム編集」生物の規制なし放出を認めた(1)。そして、EUから離脱した英国は新法案で「ゲノム編集」などのバイオテクノロジー技術の推進を定めようとしている(2)。
 
 なぜ憂慮すべきことかというと、この動きがまったく科学的な精密さを欠いているからだ。遺伝の機構はようやく解明の端緒についたばかりのところであり、人類は遺伝子の機能も十分にはつかめていない。その段階で遺伝子破壊を進めてしまえばどんな影響が生態系に現れるのか、まったく不明の状況にある。研究者も警鐘を鳴らしている(3)。 “世界を危うくする「ゲノム編集」生物の無規制政策” の続きを読む

バイオテクノロジー技術の規制は不可欠

 世の中の注目がウクライナへのロシアの戦争に注がれている間に、世界の巨大企業は史上最大級の利益を上げている。生存すら危機的な状況に追われる地域の中小企業や労働者、農家は少なくないというのに、理不尽さばかりが募る。気候危機や生物絶滅危機への対策は次から次へと反故にされる。世界の生命にとっては踏んだり蹴ったりである。
 EUでは今年12月にモンサントの農薬グリホサートの使用許可期限を迎え、使用禁止の確定がされることを多くが待っていた。ところがそれが再び2023年7月に延期された(1)。7ヶ月、延ばされるということはその期間、販売して利益を確保できるわけでモンサント(現バイエル)にとっては朗報であり、脅かされる命にとっては悲報である。そして、EUでの「ゲノム編集」生物の規制緩和の動きもある(2)。戦争が続く中で、巨大企業は着々とさらなる利益を確保している。英国でもその動きは続く(3)。 “バイオテクノロジー技術の規制は不可欠” の続きを読む

「ゲノム編集」された豚の人への移植:新たな危険

 心臓病で苦しむ患者に「ゲノム編集」された豚の心臓が移植されたが、わずか2ヶ月でその患者は亡くなった。その原因は移植された豚の心臓がウイルスに汚染されていたからのようだ。
 心臓病で苦しむ人たちにとって生きる希望をもたらすはずの臓器移植、しかし移植できる臓器の数は限られており、人間に近い臓器を持つ豚が活用されたわけだが、種の異なる心臓を人間に移植すれば人間の免疫機能はそれを拒絶する。その拒絶反応をさせないために「ゲノム編集」されていた。 “「ゲノム編集」された豚の人への移植:新たな危険” の続きを読む