日本政府は「ゲノム編集」食品は検出が不可能だから表示は義務付けることはできないと何度も繰り返している。でもこの言い分に科学的根拠はあるのだろうか? 科学的に検出することを試みて、できないと結論を出したのだろうか? それとも企業のいいなりに政策を決めてしまったのか?
EUは「ゲノム編集」生物の検出方法の研究に投資し、その判別方法について探求が続いているが、2つの研究所でその検出に成功した¹。この方法が確立できれば、もはや日本政府は同じ理由で「ゲノム編集」食品の表示を拒否することはできなくなるはずだろう。大きなニュースだ。
遺伝子組み換え食品の場合、それを開発した遺伝子組み換え企業はその挿入した遺伝子に関連する情報とその食品の判別方法の提出が義務付けられている。だから、流通する際にもその食品がどの遺伝子組み換え食品が判別できるようになっている。しかし、「ゲノム編集」食品は自然の変化と同じだと(同じでないのに)されて、挿入した遺伝子が存在していないことを示すだけで、表示もせずに流通がOKとされてしまっている。
しかし、「ゲノム編集」による変化は自然による変化とは異なり、それは判別可能であることはかねてから米国などの科学者から指摘がされていた。今年の欧州議会でその方法の検討の研究に予算がつき、2つの欧州の研究機関で公的な検討が始まった。どちらの研究機関でも「ゲノム編集」の検出は可能であることが確認され、スイスの研究機関は0.1%の微量の混入でも検出可能としている(ドイツの研究機関は大麦の場合には確実な検出に難ありとしている)。
今日と明日はドイツで、Non-GMO Summitが開催され、遺伝子操作されない食品を扱う企業や農業関係者、市民が世界から集まる。そこでも「ゲノム編集」食品をどう規制するかが大きなテーマになっている²。ヨーロッパでの遺伝子組み換えでない大豆などの耕作面積は8%増加したという。もっとも異常気象の影響を受け、収穫量はわずかに減少したというが、Non-GMO産業は着実に成長を続けており、このサミットもそうした企業の連合体が支えている。日本でもそんな連合体ができるといいのだが。
日本政府はこのような検討もなしにバイオテクノロジー企業の言いなりの政策を今から5年前に決めてしまったということになる。なんという拙速なことをしたのだろうか。その結果、日本は世界で唯一の「ゲノム編集」魚やトマトを作る国になってしまった。日本政府は早急にこの政策を見直すべきだろう。
しかし、消費者庁は10月9日に遺伝子組換え食品等調査会を開催し、そこで新たな「ゲノム編集」食品の届け出を受け入れることになると予想されている³。立ち止まることが今、重要である。
(1) Successful detection methods for new genomic techniques
https://gmwatch.org/en/106-news/latest-news/20457-successful-detection-methods-for-new-genomic-techniques
(2) Non-GMO Summit 2024
https://www.nongmosummit.com
(3) 消費者庁:令和6年度第1回食品衛生基準審議会新開発食品調査部会遺伝子組換え食品等調査会(オンライン会議:一部非公開)の開催について
https://www.caa.go.jp/notice/entry/039564/