「ゲノム編集」豚、ウイルスとの闘いに勝ち目はある?

 欧州特許庁は「ゲノム編集」豚に特許を付与¹。何のための「ゲノム編集」かというと、ファクトリーファーミングを存続させるためのものと言えるだろう。米国市場での販売も始まるかも。
 このケースは「ゲノム編集」食品がいかに馬鹿げているかの典型例になるような気がする。なぜかというと、この「ゲノム編集」豚は生殖・呼吸器症候群をもたらすウイルスが取りつくタンパク質を作る遺伝子を破壊してしまう。だからウイルスがとりつくことができなくなるから、この病気に対しても耐性がある豚になるというのだ。しかし、そのウイルスが変異したら、まったく無効ではないか。ウイルスが変異するたびに、別の遺伝子を破壊するのだろうか。次から次へと遺伝子を破壊していったら、ブロックゲームのようにいつか、崩壊してしまうだろう。このウイルスはRNAウイルスで、変異しやすい。
 これまでワクチンで対応してきたが、そのワクチンの一部を組み込んだ新しいウイルスの変異体が作られて、その結果、ウイルスはさらに毒性が増した。
 豚を狭いところに閉じ込めてすぐに感染症になってしまう飼い方をやめて、豚が健康に生きられる環境を作れば、問題は解決できる。より強毒化していくファクトリーファーミング(工場型畜産)には未来がないのだから、「ゲノム編集」など使うのはやめて、畜産のあり方を検討する時期が来ているのではないか?
 
 この特許豚は畜産業界にも大きなインパクトを与えるだろう。畜産農家はこの特許豚は繁殖させることはできず、毎回、特許料を払わなければならない。子豚の購入価格はその分、高くなる。この特許はGenus社が保有しており、世界でこの豚を生産するようになればGenus社は莫大な特許料で儲けることができる。
 
 欧州議会は6月の議会選挙の後、この「ゲノム編集」動物について検討を始める。EUは「ゲノム編集」に特許を認めないと決議している。でも特許庁はEUの機関ではないため、EUの決定に影響を持たせることは難しいという見方は強い。「ゲノム編集」畜産・農業が広がれば、やはり農家・消費者は特許による支配に甘んじざるを得なくなる。中国も「ゲノム編集」小麦を承認²。「ゲノム編集」が従来の遺伝子組み換えにない危険を持つことも顧みずに、今後、世界はなし崩し的に動いていく可能性がある。
 「ゲノム編集」でない食を選ぶことはやはり不可欠なことと言わざるを得ない。そのためにどんな有効な策があるか、現在、検討中。

(1) First European patent granted on CRISPR pigs
https://www.testbiotech.org/en/unkategorisiert/first-european-patent-granted-on-crispr-pigs/

(2) China approves first gene-edited wheat in step to open up GM tech to food crops
https://www.reuters.com/markets/commodities/china-approves-first-gene-edited-wheat-step-open-up-gm-tech-food-crops-2024-05-08/

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA