自然なタネまで特許で独占できる「ゲノム編集」

　「なんで『ゲノム編集』食品、反対しているの？　私はそんなもの栽培しないし、確かなモノしか食べないから大丈夫」
　
　それは大事だけど、それだけじゃ十分じゃない。その理由は多数あるけど、その中でも大事なのは「ゲノム編集」でないタネにも影響が及ぼうとしていることだ。
　
「なんで『ゲノム編集』でないタネにも影響が出るの？　交雑するから？」
　
　交雑の問題も大きな問題なのだけど、それだけじゃない。なぜかというと、普通のタネの遺伝子までが特許が取れるようになってしまって、遺伝子組み換え企業の独占物になりうるからだよ。
　
「なんで遺伝子操作していない普通のタネの遺伝子に特許が取れるの？　自然が作ったものは遺伝子組み換え企業の発明物じゃないから特許の対象になるわけないじゃない？」
　
　いや、それがなってしまうんだ。たとえば、「ゲノム編集」大豆、普通の大豆とどこが違うかというと特定の遺伝子が破壊された状態になっている。それは通常の大豆と異なる性質を持つ新品種だということで特許の対象となる。
　
「それは認めたくないけど、アメリカや日本が認めてしまっているわけだよね。でもだからといって、遺伝子操作されていないタネは関係ないよね？」
　
　ところが、その「ゲノム編集」大豆の特定の遺伝子の破壊は「ゲノム編集」を使わなくても自然界でも破壊されうる。その遺伝子の破壊によって生まれる品種は「ゲノム編集」をしようと自然に生まれようと、等しくその企業の発明物だ、という理屈で、その当該の遺伝子を持っているタネにはすべて特許を及ばせようとしているんだ。
　　
　だから、遺伝子組み換え企業が「ゲノム編集」と自然の変異をごたまぜにして同じことにさせようとしているのは単に「ゲノム編集」食品を自然食品と同じものとして規制させずに流通させるためだけではない。「ゲノム編集」していない自然のタネも特許を得る道も開かせようとしているんだ。
　
　それが可能となると、単なる遺伝子に関する機能を見つけた企業がその遺伝子を持つすべてのタネの特許保有者になれることになってしまう。しかも、種を超えて。その遺伝子が大豆だけでなくて他のナタネにもあればナタネもその企業の特許の対象になってしまう。在来種の種子だって、特許の対象にされてしまうこともありうるかもしれない。これをFriends of the EarthなどのNGOは、自然を特許で独占しようとするものだ、と批判して、詳しい報告書を発表している(1)。「ゲノム編集」の規制緩和と特許法の乱用をセットに使って、普通の種子も遺伝子組み換え企業の独占物にされようとしている。
　
　すでに遺伝子組み換え企業2社で世界の種子市場の4割は独占されている。もし、彼らがこの方法が使えるようになってしまったら、私たちの食・農はわずかな企業による支配がさらに強化されてしまうことになる。遺伝子組み換え企業のコルテバはすでに「ゲノム編集」の1430の特許を申請中で、モンサントを買収したバイエルは119の特許を申請しているけど、その特許が及ぶ範囲は「ゲノム編集」種苗に限らない。
　
　日本でも種苗法が改正されたよね？　あの改正の意味はこうした新たなタネの企業支配のための布石にもなりえるんだ。
　
　今、遺伝子組み換え企業はEUに膨大なお金を使ってロビー活動しているけど、それは「ゲノム編集」は遺伝子組み換えでない、として規制緩和させることを狙っている。それは単なる「ゲノム編集」の規制緩和に留まらない。つまり「ゲノム編集」は自然と変わりないとさせることで、「ゲノム編集」によって特許を得ると同時に自然をも特許の対象にしてしまう道を開くことになる。
　
　だからこの道を開かないようにEUにしっかりと「ゲノム編集」種苗はNewGMO（新しい遺伝子組み換え）として定めた欧州裁判所の決定を守らせることは重要なのだけど、今、これが覆らせようとしている。この攻防は単に「ゲノム編集」作物を流通させないために重要なだけでなく、他のすべてのタネを独占から守るためにも重要になる。
　「ゲノム編集」に反対する運動だけでなくて、生命への特許に反対する特許問題で活動する運動もいっしょに動き始めている。在来種などを守る活動をしている人たちも合流し始めている。今後の世界の食を守る大事な運動になっていくと思う(2)。
　
　もし自然界のタネもわずかな遺伝子組み換え企業の独占物となったら、もう食・農の未来はほぼ遺伝子組み換え企業が握り、特許料払わない人は食が作れないということになってしまう。これは「ゲノム編集」食品が流通するかどうかに留まらない巨大な問題になってしまう。
　
　「ゲノム編集」食品がなぜ問題か、初心者講座を12月7日午前10時から無料で開催します。
参加は無料ですが、OKシードプロジェクトのサポーター登録が必要です。サポーターにはいっさいお金は不要です。月1〜2通のメールが届きます。
　ぜひ、ご参加ください。
https://okseed.jp/supportus.html
　
　またOKシードプロジェクトのすべての活動は市民のみなさんからの寄付で成り立っています。ぜひ、可能な方はご支援をどうぞよろしくお願いいたします！
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参考情報（以下は英語）
(1) How biotech giants use patents & new GMOs to control the future of food

How biotech giants use patents & new GMOs to control the future of food

(2) No Patents on Seeds!
https://www.no-patents-on-seeds.org/en/petition

Seed Freedom report
https://www.navdanya.org/living-seed/seed-freedom