リオグランデドスル州の被害は想像超えて、大きな問題になってしまいそうだ。大規模農業が盛んな地域だがセラード地域が輸出向けの大豆生産が多いのに対して、リオグランデドスル州ではブラジルの稲の7割を占め、それは国内向け。収穫が進んでいたものの、それは終わっておらず、国内の食料事情に大きな影響を与えそうだ。
そして、この地域はアグロエコロジーによる米生産の半分を生産する地域。1万トンの有機米が失われた可能性がある。この有機米の多くはMST(土地なし農業労働者運動)に属する農民たちが作っている。もともと土地を持たない農業労働者が農地改革によって土地を得て、農薬も化学肥料も使わないアグロエコロジーによって生産を拡大してきた。そしてそのお米は都市部のホームレスにも提供されてきた。MSTはラテンアメリカ最大の有機米生産団体となっている。
ホームレスの解決策としてアグロエコロジーが提唱され、金持ちのための有機食品ではなく、必要としている人たちに必要な栄養を届けるユニークな社会運動として注目すべきものだ。
その生産地が大打撃。畜産も大きな苦いを受けている。その生産者の多くは避難を余儀なくされた¹。
そして時を同じくして、農薬の大緩和法案が成立。昨年、連邦議会を通過したが、ルラ大統領が拒否権を発動して、却下していた。しかし、アグリビジネス側は議会を動かし、拒否権を覆す結論をこの時期に出した²。最悪である。アグリビジネスが作り出す火事に油を注いでいるのは日本を含む世界の金である。
リオグランデドスル州議会では気候危機をさらに深刻にする環境規制緩和案が成立³。こちらを推し進めるのもアグリビジネス。
この地域の環境破壊の主要原因を作り出しているのがアグリビジネスで、その結果、多くの人が被害を被っているのに、そのアグリビジネスに入るお金は止まらずに権力は揺るがない。そして、その破壊をさらに進める法案が無理矢理通される。
危機は本当に待ったなしの状況になっているのに、その危機を自分の利益のためにさらに進める動きが止まらない。高い金利を求める国際金融勢力がそれを後押ししている。この構造を無視して、ブラジルの人びとを非難することは許しがたく愚かなことだ。この動きに抗して闘っているのは圧倒的に彼らだからだ。でもアグリビジネスに集められる軍資金がその人びとの闘いを抑えつけてしまう。私たちには彼らへの資金供給を止める義務がある。残念ながらこれまでODA含む日本の公金も使われてきている。
日本の国会で次から次へと戦争法案が成立していることとまったくパラレルの出来事である。
もし、アグリビジネスへの軍資金が止まれば、この悪循環は変わるだろう。グローバルな食のシステムを続ける限り、環境破壊は止められず、人びとの困難はますばかりであることをすでに多くの人が気が付いている。
今回の悲劇が、現在の食のシステムを変えるきっかけになることを望みたい。私たちはその一部である。
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