種子への特許にノー:特許で奪われる種子の権利

 生命体に特許を認めることが遺伝子組み換えが登場してから始まった。遺伝子組み換え技術に特許を与えるならまだわかる。そうではなく、そうして組み換えられた生命体そのものに特許がかけられる。たとえば遺伝子組み換え大豆はモンサントの独占物となる。だからその種子を買うこと自体できない。できるのはその種子を育てるライセンス契約を結ぶこと。だから、その種子を自分のものにできない。保存すれば窃盗ということになってしまう。自由に研究することもできない。モンサントの所有物を勝手に使ったことになり法的に訴えられる可能性がある。
 やがて、この特許は遺伝子組み換え種子だけでなく、従来の育種にも認められるようになってきた。これはさらに困った事態をもたらす。
 従来の種子にはこうした特許はかけられていなかったから、自由に交配させて新しい品種を作ることもできた。それができなくなる。種子の開発に莫大な特許料の支払いが必要となり、独立した小さな種子会社が生き残ることは困難な時代になってしまう。また巨額な種子開発費用がかかるために多品種の種子を維持することはさらに難しい。その結果、種子の多様性は大幅に減らされてしまわざるをえない。多様性が減れば生態系の危機につながりかねない。
 生命への特許は認めてはならない。そうした声が世界から上がっている。そして、ドイツ議会は2012年2月9日、従来の方法で育成された種子および家畜への特許を認めない決議を行う。翌日、EU議会も同様の決議を採択。
 ところが遺伝子組み換え企業を筆頭に多国籍種子企業はこの規制に挑み、2017年、EUは新しい規則を作り、従来の品種にも特許を認めることができる道を開いてしまった。昨年はブロッコリなど25品種ほどに特許が認められたという。

 遺伝子組み換えであろうとなかろうと、種子に特許が認められ、多国籍企業の独占物になる種子が増えている。こうした事態に対して、ヨーロッパの市民団体はNo Patents on Seeds coalitionという種子への特許に反対する連合を結成して、種子への特許への反対運動を拡げている。
 特許権とは少し異なるが種苗開発者の育成者権も特許と同様に扱う方向になってきており、各国に企業の育成者権を守る種子法の制定が強制されつつある。これによって農家の種子の権利はほとんど奪われてしまいかねない。いわゆる「モンサント法」と言われるものである。世界で問題ある動きが進んでいるが、一方で反対運動も支持を拡げている。
 言うまでもなく、日本国内でも大問題。

Growing opposition to patents on seeds
Seed giants still trying to expand their monopolies

No Patents on Seedsによる40ページの報告書 (PDF40ページ)

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