世界が規制を強めるグリホサートを大幅規制緩和した後に日本政府が行おうとしているのはベトナム戦争で使われた枯れ葉剤の主成分2,4-Dの大幅規制緩和。怒りを通り越して呆れるしかない。
本日6月7日、厚生労働省の薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会農薬・動物用医薬品部会で、2,4-Dの大幅規制緩和案が審議される。もし、これが承認されて実現したら、日本列島の住民は小麦を媒介に枯れ葉剤により汚染させられることになってしまうだろう。
危険な順に、小麦、肉、ばれいしょとなる。
その案では麦類の4倍、りんご、西洋なしの5倍が目をひく。
小麦 0.5 ppm → 2 ppm
大麦 0.5 ppm → 2 ppm
ライ麦 0.5 ppm → 2 ppm
りんご 0.01 ppm → 0.05 ppm
西洋なし 0.01 ppm → 0.05 ppm
ばれいしょ 0.2 ppm → 0.4 ppm
さとうきび 0.05 ppm → 0.1 ppm
綿実 0.05 ppm → 0.08 ppm
乳 0.01 ppm → 0.03 ppm
一方、米、大豆など逆に規制が厳しくなっているものもある。
米(玄米) 0.1 ppm → 0.05 ppm
大豆 0.05 ppm → 0.01 ppm
なぜ、2,4-Dが大幅規制緩和されなければならないのか? この2,4-Dはベトナム戦争で使われた枯れ葉剤エージェントオレンジの主成分の1つ。2,4,5-Tと混合されたエージェントオレンジは大量のダイオキシン汚染をもたらし、ベトナムの人びとに数世代にわたり続く健康被害をもたらした。2,4,5-Tはその製造も使用も禁止されたが、2,4-Dは規制を免れ、日本を含め、現在でも農薬として広く使われている。
しかし、たとえばモンサントの農薬ラウンドアップ以上に危険が高いとされる。なぜ、この危険な農薬を大幅緩和しなければならないのか? 小麦などが緩和されていることに明かなように、まずこの大幅規制緩和の目的のメインは収穫前散布(プレハーベスト)だろう。収穫前に散布することで収穫・乾燥が効率的に行われる。プレハーベストではラウンドアップ/グリホサートが多く使われるようになってきているが、米国ではこの2,4-Dも同様に使われているのだろう。
そして、綿実の基準値も微妙に上がっていることにも注目したい。グリホサートが効かなくなってきたことに対して、モンサントはジカンバという古い除草剤を、ダウ・ケミカルは2,4-Dをグリホサートに混合させることで対策を立ててきた。しかし、ベトナム戦争で使われた2,4-Dをグリホサートに混合させ大量に播くことに対しては米国内で反発が強く、また中国政府も承認しなかったため、長い期間、2,4-D耐性の遺伝子組み換え作物は承認されなかった。しかし、中国政府もそれを呑み、いよいよ2,4-D耐性遺伝子組み換えコットンの栽培が始まろうとしている。今回の規制緩和はそうした米国での状況を受けて、日本が規制緩和しようというものだといえるだろう。日本政府は国際基準に合わせるだけだと弁解するだろうが、その国際基準はモンサントやダウ・ケミカルが作っているようなものだ。
米国がTPPに参加しなくても、米国の必要を粛々と先んじて受け入れていこうとする動きと言わざるをえないのではないか。
当然のことながら、こんなことがまかり通っていいわけはない。こうした規制緩和には可能な方法で反対の声を上げる必要がある。本日の審議が通ってしまえば実施決定前にパブリックコメントが行われる。反対の声を出そう。
この変更含めてマスメディアは報道しないと思われるので、この動きを止めることは難しいが、まずはこんなことで日本の食が危険に日々なっていることを一人でも多くの人が知り、変えていく力を強めていくしかない。
政策を変えることができるまで時間がかかる。それまでどうするか?
輸入小麦で作られた製品をできるだけ食べない。米中心の菜食生活をすれば危険は減る。国産小麦、できれば有機小麦、じゃがいもも有機、減農薬を選ぼう。特に妊婦、小さな子どもをお持ちの家庭はその期間だけでも可能な限り、危険を避けてほしい。