生態系が崩壊し、人類も危機的状況に追い込まれる可能性がいくつもの分野から同時に警告される事態になった。しかも遠い未来ではなく、2050年にはそれがやってくるかもしれない。その原因は人間の活動であり、中でも工業的な農業を変えなければもう人類には未来がない、と書くと、どこのサヨクがそんなことを言っているんだ、と言われるかもしれない。しかし、こうした指摘は国連や保守的なシンクタンクから出てきている。
一部の環境団体が警告しているという状況ではなく、保守的な研究機関も否定できないほど差し迫った脅威として迫ってきている。「危機なのだから今の生き方をやめろ」と言えばいやになるが、でも、これはもっといい生き方、いい世界を作るきっかけにもなりうる可能性も示されている。
それなのに、日本にいると、そんな危機なんてどこにあるのか、という感じになってしまわないか? でも最近、そうした情報は日本語圏でも少しずつ読めるようになってきている。
農業の毒性が48倍に、『沈黙の春』再び? 研究
ネオニコチノイド系殺虫剤で昆虫に大きな被害
米国の農業環境が25年前に比べて48倍も毒性が高くなったという研究を取り上げたナショナルジオグラフィックの記事。この研究はすでにさまざまな反響を呼んでいるが、この記事も悪くない。
記事の要点
・ 毒性上昇の92%の原因はネオニコチノイド
・ ネオニコチノイドは環境中で1000日以上も毒性を保つ
・ ハチに対してはDDTの1000倍も有毒
・ 米国でのネオニコのほとんどは種子コーティング目的
・ アグロエコロジーを採用すればネオニコ系農薬は不要
・ 再生型農業を使えば昆虫被害は10分の1で利益は倍になる
しかし、注意して読まないと大きな問題が抜けてしまう。ネオニコが一番使われているのはトウモロコシ、ナタネ、大豆、コットンの種子のコーティング。米国ではそれらの作物はほとんど遺伝子組み換えだということ。つまり、米国でネオニコ汚染を引き起こしている最大の寄与者が遺伝子組み換え作物であるということになる。
ネオニコチノイド系農薬製造企業はバイエル、シンジェンタ、住友化学、三井化学など。これらの企業が世界の種子の過半数を握っている。そして自由貿易協定を使って、世界の政府にその種子を買わざるをえないように圧力がかけられている。
こうした多国籍企業の種子に依存せずに、化学肥料や農薬の使用を減らし、土を守る農業に転換していくことで、農家は利益が倍増する。そして、昆虫も復活し、人びとも健康になり、人類の生存危機も遠のく。そんな世界に向かうことができれば、毎日、将来に悲観して生きる必要もなくなる。うれしいことに世界でそうした動きが日に日に強くなってきていることに励まされる。
でも、今、日本では「日本を世界一民間企業が活躍できる国にする」という方針の下、真逆の方向にまっしぐら。やはり根本的に向かう方向を変える必要がある。
この記事でも触れられている蝶の減少には実はグリホサートが大きな原因となっていると言われている。モンサントのグリホサートは除草剤だから虫には関係ないじゃないかと思われるかもしれないが、北米を象徴する蝶、オオカバマダラの幼虫が食べるトウワタ(Milk Weed)をグリホサートが枯らせてしまうことによって、オオカバマダラは絶滅危惧種となっていると指摘されている。そしてハチなどの腸内細菌にも大きな影響を与えていることを指摘する研究もある。GMOはダブルで汚染。
参考:
気候変動をゆっくりにさせるためには国連は農業を変えなければと警告する。
To Slow Global Warming, U.N. Warns Agriculture Must Change
ネオニコによる種子処理についてその悪影響を示した研究(添付の図はこの論文から。ネオニコの種子コーティングが遺伝子組み換え作物で占められていることが見て取れる)
Neonicotinoid Seed Treatments: Limitations and Compatibility with Integrated Pest Management