大きなシナリオを変えるためのハンドブック

 生きられる時間はあとわずかしかない、と宣告される。どうしよう? そんなはずはないから、疑い、別の判断を求めようか? それともその宣告を覆す方法を徹底的に探し、抵抗する? それとも残された時間を悔いのないように生きることに集中する?

 でも、この宣告が私個人になされたのではなくて、もし、人類全体になされたものだったらどうだろう? もう私など人生結構すでに生きたものならばまだいい。でも、これからを生きようとする子どもたちだったら、あるいはこれから生まれてくる子どもたちはどうなんだ。あまりに理不尽だ。
 
 今、私たちの世界では悲しいことに、このシナリオが現実化しつつある。少したどってみよう。このままの状況が続けば2050年までに世界の土の90%がダメージを受ける。わずかに残る土を求めて、紛争・戦争は激化する。ますます土は失われる。土は世界の炭素の貯蔵庫。土が失われれば、ますます多くの二酸化炭素やメタンガスが大気に排出され、気候変動はさらに激化。生命活動を根底から支える微生物も力を失い、100万種を超す動植物が絶滅。食事情も悪化し、さらにさまざまな病気、疫病が蔓延する。そして、…
 
 「そんなのSF映画の見過ぎだ。そんなデタラメなシナリオを語っているのはどこのトンデモ科学者だ?」残念ながらこのシナリオが元にしているデータは国連や保守的なシンクタンクが発表しているものであり、少なからぬ研究機関が警鐘を鳴らすさまざまな研究がすでに出ている。
 このプロセスは2050年に突然来るのではなく、今も毎日毎日、さまざまな生命が私たちの知らないところで死に絶えている。私たちの回りでも健康にいろいろなトラブルが生まれているが、それもこのプロセスと深く関わっている可能性がある。
 
 このシナリオを変えることは不可能なのだろうか? いや、十分可能なはずだ。少なくとも、今すぐに、取り組みを開始できればシナリオは十分変えられるだろう。取り組みは多岐に考えられるが、その1つ、土を中心に考えてみよう。今、失われつつある土を守り、その力を取り戻すことができれば、気候変動も収束し、それはさらに耐性菌の猛威も防ぐことにも大いに役立つと言う。それは世界の紛争も未然に防ぎ、世界はより平和になるだろう。そうすれば病から多くの人が回復し、回復した豊かな自然の中で子どもたちがより幸せに生きてくれることだろう。

 その道はしかし、実現困難なものなのだろうか? いや、すでに世界には実現する上でヒントになる成功例がいくつもある。それから学ぶことができる。そして実は日本はそのパイオニアでもあった。しかし、日本はその価値を見失ってしまい、その存在を多くの人が忘れてしまっているだけ。しかも、現在の日本は行くべき方向から完全に真逆に、つまり破局を加速化する方向に進んでいる。でも、価値ある経験も技術も日本にはまだある。世界ともそれは共有できるし、役立てるはずだ。
 
 それではその取り組みを今日から開始しよう。始めるためには、このプロセスがどのように生まれてきたのか、理解する必要がある。世界で何が起きているのか、マスメディアが伝えない動きも知る必要がある。根本の問題から押さえれば大きな力になるはずだ。
 しっかりこの問題を捉えて、取り組みを進めることができれば、この危機をきっと乗り越えることができるだろうと確信する。でも、時間は限られている。成功するかどうか、私たち一人一人の行動にかかっている。
 
 この取り組みを始めるためのハンドブックを書き始めます。来年2020年、ミツイパブリッシングから出版予定です。

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