昨日30日、ゲノム編集食品を有機JASに含めるかどうかの会議、やはり開かれたが、参加した検討委員のほとんどが反対だったとのこと。
当然ながら有機の本質からして、ゲノム編集やRNA干渉を含む遺伝子操作技術が使われた食品は有機認定の対象外とする他はなく、もしそうしてしまえば有機認証の存続そのものが問われる事態となってしまうだろう。委員がほとんどみな反対というのは当たり前の話だと思うけれども、でも、果たして安心できるだろうか? 今、有機農業は世界最大の成長産業の1つでもあり、それをなしくずしにしてしまう政策はそう簡単に押しつけることはできないと思う。でも、気がかりなところはある。
現在の有機農産物の日本農林規格では遺伝子組み換えは排除されている。しかし、そこでの遺伝子組み換えの定義は「酵素等を用いた切断及び再結合の操作によって、DNAをつなぎ合わせた組換えDNA分子を作製し、それを生細胞に移入し、かつ、増殖させる技術をいう」となっている(1)。
実際にゲノム編集もCRISPR-Cas9では細菌由来のRNAや抗生物質耐性タンパク遺伝子を合わせたものを挿入しているが、今のところ、その遺伝子は発現させないとしている(消えるという保証はないのだが)。そうならば「これはゲノム編集はこの範疇に入らないから、ゲノム編集は有機認証可能である」と強弁してくるかもしれない。ゲノム編集作物は従来のものと同じものとして流通させるのが遺伝子組み換え企業の悲願であるから、まだ警戒を解くのは早い。
米国でも79の有機農業団体がゲノム編集を有機に含めることに反対の書簡を提出している(2)。今月に全米オーガニック認証基準委員会理事会が開かれるというからそちらも注意しておきたい。
それにしても今回の会議、名前も場所も時間もいまだに公開されていない。こんな検討を農水省がやったというのであればこれは追及せざるをえないだろう。最近の日本政府の政策はたとえば規制改革推進会議など国会の代表すらまったくいない私的な会議で決め、国会で検討するのは形式だけというのが実態になってきた。いや規制改革推進会議自身ダミーか? 多国籍企業の利権に沿う政策がどこかで練られてベルトコンベアーとして計られる。そんなことが続けられては民主主義は死んでしまう。
近年驚くのは政府の非公開の会議の多さだ。たとえば内閣府食品安全委員会の遺伝子組換え食品等専門調査会はほぼ非公開が続く。今年は9月までに11回開かれているが公開されたのはわずか2回だけ(3)。今日はTPPの対策本部会議が開かれたようだが、これまた非公開。でもこれらは開催そのものは告知されている。ゲノム編集のこの会議は告知すらされていない。
食品安全委員会の会議が非公開とされるのは審査される企業が特許に関わる情報公開を拒む場合、簡単に非公開になってしまう。公開された会議であっても配布されたであろう資料もまったく公開されておらず、議事録も見ることができない。ますます政府の情報は見えなくなってきている。これでは何のための会議なのか。市民の監視はほぼ届かない。
情報は社会にとって血液のようなもの。回らなければ細胞が壊死し始める。ナチスドイツも日本軍部も情報統制し、さらに部下に忖度を強要した結果、上層部に都合のいい情報しか集まらなくなり、上層部は現状すら把握できなくなって、最終的にはほぼ自壊状態だったという。今の日本はこのままでは自壊する他、ないように思えてならない。そうさせずに方針転換させるためにも情報公開を強く求めていきたい。
(1) 有機農産物の日本農林規格