「ゲノム編集」による遺伝子操作について、日本語圏では推進派の情報が大量に流されている。「ゲノム編集」はその中心的技術であるCRISPR-Cas9がノーベル化学賞を取るなど、遺伝子の機能を探求するためには画期的な技術であることは疑えないが、それを使って農作物や家畜を作るというのはとんでもない短絡である。にも関わらず、それが画期的な品種改良方法であるかのような情報がマスコミや高校などでも使われており、大いに懸念せざるをえない。
そんな中で「ゲノム編集」とはどんな技術で、食に適用をすればどんな問題が起きるか、欧州議会のGreens/European Free Allianceが60ページ超のわかりやすいガイドブック『ゲノム編集−神話と現実』をまとめた。全文無料でダウンロードできる。
著者はこの間、「ゲノム編集」を含む遺伝子組み換え問題に市民の側から取り組んできた専門家であるClaire Robinson氏、著名な分子遺伝学者であるMichael Antoniou氏が技術的サポートをしたもの。
目次の一部だけでも訳しておきたい。
- ゲノム編集は遺伝子工学であって品種改良ではない。
- ゲノム編集は正確ではなく、予期しない遺伝エラーを生み出す。
- ゲノム編集は自然界で起きるものとは異なる遺伝的変化を生み出す。
- ゲノム編集は危険であり、それによる生産物は安全ではない。
- ゲノム編集は検出可能である。
- ゲノム編集は巨大企業に所有され、コントロールされる。
- ゲノム編集は望む結果を手っ取り早く得るための頼れる方法ではない。
- ゲノム編集は危険であり、食や農の問題を成功裏に解決できると証明されてきた道から逸脱させるもので、高くつく。
ほぼ日本で報道されていることと真逆の内容だが、それぞれに科学的な根拠が示されている。
一般市民が「ゲノム編集」作物を栽培するなどというおよそ常軌を逸したことをやろうとしているのは世界広しと言えども日本しかいない。その日本でこそ、このガイドブックをしっかりと読む必要がある。
GENE EDITING MYTHS AND REALITY
A GUIDE THROUGH THE SMOKESCREEN
https://www.greens-efa.eu/en/article/document/gene-editing-myths-and-reality/