フィラデルフィアの民事裁判所でケリー・マーテルさんが非ホジキンシンパ種となったことでラウンドアップが原因であるとして訴えたことに対して裁判所は10対2で350万ドル(約5億円)の賠償を命じる判決を下した(1)。
ラウンドアップ裁判は3回連続、モンサント・バイエルの責任を認める判決が続いた後、バイエルの巻き返しがあり、9回訴えが退けられたが、これで5回連続、バイエルの責任を認める判決が続いたことになる。
ラウンドアップによって非ホジキンリンパ腫が発症したことが問われたが、判決はそれを認めた形。最近のラウンドアップ裁判ではグリホサート単独ではなく、添加物との混合による効果による被害に注目が集まっている。グリホサート単体では有害さが発揮されず添加剤によって、その有害さが引き出される、そしてその添加剤そのものが有害であることが強調されている(2)。
これは現在日本政府が進めているグリホサートの再評価でも重要な観点だ。グリホサート単体だけでは細胞壁や細胞膜をくぐり抜けず、その有害性が正当に評価できない。だから実際に売られている製品と同様に添加剤の入った形で評価しなければ、本来の毒性を調べることができない。これまでの安全評価は単体だけだった。
今回の訴訟の後にも同様の裁判が5万件、控えているという。バイエルは集団和解に持ち込んだつもりだったが、和解に応じない件数がそれだけあるということになる。バイエルの株価は低迷を続けており、株主からのバイエルに対する批判も高まっている。早くラウンドアップの販売をやめて、補償に努めるべきだろう。
しかし、一番驚くのはこの5回連続のバイエル(モンサント)の敗訴、日本のメディアで報道したところが見当たらないことだ。ここまで日本のメディアは忖度するのだろうか? 日本ではグリホサート系農薬の使用量は毎年増えるばかり。日本の中でこそこのニュースは知らせる必要が高いと思うのに、どこからも聞こえてこない。日本語情報圏が異常な状況になっている。
(1) Bayer ordered to pay $3.5 million in latest Roundup weedkiller trial
https://www.reuters.com/legal/bayer-ordered-pay-35-million-latest-roundup-weedkiller-trial-2023-12-06/
(2) As Bayer confronts mounting Roundup losses, all eyes on Philadelphia trial
https://www.reuters.com/business/healthcare-pharmaceuticals/bayer-confronts-mounting-roundup-losses-all-eyes-philadelphia-trial-2023-12-04/