重イオンビーム放射線育種でも有機認証するって許される?

人はなぜ有機農産物を買おうとするのだろうか?
 それは有機農産物が農薬や化学肥料を使っていないから、体にいいから、環境を汚染したくないから、農家の健康が気になるから、地域社会への投資になるから、他の生命も傷つけたくないから、…いろんな理由があるだろう。
 何を有機農産物とするか? それは誰が決めるのだろうか? 当然、さまざまな人が合意したものが基準となるべきだ。有機農業を世界に拡げる上で大きな役割を果たした組織の名前はIFOAM(International Federation of Organic Agricultural Movements 国際有機農業運動連盟)、つまりMovements、運動なのだ。ボトムアップで食のあり方を変えていくことなしに有機農業は保つことはできないことがこの名前にも現れている。
 もし有機認証の基準を一部の企業や国家が勝手に決めてしまったら、どうなるだろうか? 消費者が望まない作物を有機だと言って売ったらどうなるか? そんな有機は誰も買わなくなるだけ。つまり消費者がその認証基準に関わることが決定的に重要だ。
 たとえば、米国では、米国での有機認証基準を検討する全国オーガニック基準委員会(National Organic Standards Board、NOSB)は年2回の会合を持つが、その会合前にはさまさまな市民団体がNOSBでの議案について、市民に問題提起を行い、市民がそれに参加して、多くの市民がNOSBの議論に声を上げる。
 というのも今、有機農業は世界の食の中でもっとも成長が著しいセクターであり、特に多国籍企業のAmazonが有機食品スーパーで名を上げたWhole Foodsを買収するあたりから大企業が有機認証基準に介入し始めた。大企業にとって都合のいい水耕栽培を有機認証で強引に認めさせて、工場で作る野菜も有機認証してしまった。こんな事態に声を上げたのが米国のさまざまな市民団体だ。現在、水耕栽培の認証の撤回を含めて有機認証を守る大きな運動を作り出している。この他にもさまざまな形で大企業による圧力が有機認証にかけられているけれども、こんな市民の動きで有機認証が骨抜きになるのに歯止めがかかっている状態だ。

 一方、日本はどうか? 農水省は7月1日、放射線で品種改良した農作物を有機認証することを認めるQ&Aを発表した。これは「コシヒカリ環1号」や「あきたこまちR」などでも有機認証して構わないという宣言と言えるだろう。消費者は有機認証されているから安心だと思って買う。でも、もし、それが重イオンビーム放射線で遺伝子破壊され、マンガンは3分の1未満になってしまっている、安全性すら科学的に確かめられていない米であったらどう思うだろうか?
 
 農水省は重イオンビーム放射線で品種改良した品種を有機認証してはいけない、ということは国際的な有機農業のルールを規定するコーデックスガイドラインに掲載されていないから問題ないのだという。でも、重イオンビーム放射線かけて遺伝子壊したものは日本でしか作っていない。世界で問題になったけど、問題なかった、ということでルールブックに載っていないのではなく、そもそも誰も使っていないから載っていないだけなのではないか? 現在載っていなければ何でもやっていいというわけではなく、そんなことをやるのはルールブック破りと言わざるを得ない。
 
 日本の有機の基準を国が勝手に決めてしまうということは許されるだろうか? そんな基準を誰が信用するだろうか? 政府は根本的に有機農業を理解していない。このまま黙認することは許されない。
 
 この認証基準をどのように変えていくか、今後、知恵を絞りたいと思います。いずれ学習会や集会も必要になっていくと思います。ぜひ、この事態を変えていきましょう!

国税庁・農水省:有機農産物、有機加工食品、有機畜産物及び有機飼料のJASのQ&A
https://www.maff.go.jp/j/jas/jas_kikaku/attach/pdf/yuuki-462.pdf#page=57

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA