「ゲノム編集」表示ない流通は遺伝子組み換え企業天国実現のため

 政府の規制が急速になくされている、それがあたかもよいことであるかのように。しかし、それでどんな世界になってしまうか、ちゃんと想像して、その恐ろしさを感じて、手を打たないと大変なことになってしまう。
 日本では「ゲノム編集」食品は表示もせずに審査もなしに流通させることが認められてしまっている。これは何をもたらすのか? 遺伝子組み換え作物の栽培国であるカナダで大問題になっている(1)。

 まだカナダでは「ゲノム編集」食品への対応は決まっていない。でも、今、「ゲノム編集」食品を自由に流通させようというバイオテクノロジー企業(遺伝子組み換え企業)の圧力でとんでもないことになろうとしている。なんと、開発企業が外来の遺伝子が入っていないと自社で確認すればそれは政府に知らせる必要すらなく、即流通していい、というのだ。

カナダ政府の「ゲノム編集」政策

 これは驚きで、米国でさえも、FDA(食品医薬品局)が外来遺伝子が入っていないか、チェックすることになっている。たとえばRecombinetics社が作った角の生えない「ゲノム編集」牛から挿入した抗生物質耐性遺伝子が残っていることが検出され、この牛が市場に出る計画は消えた。Recombinetics社は挿入した遺伝子は消えていると申告していたにも関わらず、FDAは別途、ゲノム解析を独自で行い、その結果、検出された。ゲノムは複雑な構造物であり、ゲノム解析方法にも複数方法がある。同社は挿入遺伝子はもはや存在していないと主張したが、たぶん、安い方法で確認しただけで、FDAは金のかかる方法で綿密にやったということだろう。開発側の都合のいい主張のままであれば、この抗生物質耐性タンパク入りの牛肉は市場に出回っていたかもしれない(2)。
 ところが、もしカナダがこのような形で認めてしまったら、消費者はもちろん、政府もまったく事態をつかむことができなくなる。バイオテクノロジー企業はすべて自分で決めることができて、その情報はその企業しか持っていないことになる。もし、健康被害が拡がったとしても、政府も消費者もその原因を突き止めることは至難の業となるだろう。
 
 開発企業が自分で判断できる。これは企業にとっては天国だ。これまでは開発したものを長年、承認得るまでに待たなければならなかった。企業天国は消費者地獄になりうる。そして外来遺伝子が入っていない、という理由で「ゲノム編集」以外のRNA干渉などの遺伝子操作方法も野放しになるだろう。そして、従来の遺伝子組み換え食品の規制も形骸化する。
 カナダの市民団体はこの「ゲノム編集」食品の規制をなくすことが遺伝子組み換え規制をなし崩しにする、特に遺伝子組み換え木が野放しになることを指摘している。
 そもそも遺伝子組み換え農業がもたらした問題、それにここ近年、大きな反対運動が高まった。健康被害、環境被害に世界が気が付き、March Against Monsanto(モンサントの反対する行進)は世界各地で行われた。そして、遺伝子組み換え企業は追い詰められ、モンサントなど遺伝子組み換え企業に対する裁判も頻発した。
 
 「ゲノム編集」食品とはこの遺伝子組み換え企業の窮地を救うトロイの木馬だと警告続けてきたけれども、彼らは政府に一切規制させないようロビー活動に大金を投じている。なぜ、そうするか、政府も市民も知らない状況を作れば彼らの天下になるからだ。遺伝子組み換え企業の馬脚が見えてきた。
 
 カナダでもし規制がなくなれば、それは他の国に影響を及ぼす可能性がある。カナダの市民団体CBANは5月10日までこのカナダ政府の案に反対するオンライン署名を実行中(1)。日本からも参加可能。

 5月12日には無料の学習会があります。ぜひご参加を!

(1) No Regulatory Exemptions
Demand mandatory GMO safety assessments
https://cban.ca/take-action/no-exemptions/

(2) 『ゲノム編集ー神話と現実:煙幕の中のガイドブック』
第4章20ページを参照のこと
https://okseed.jp/genomemyths.html

(3) OKシードプロジェクト:学習会5月12日午後8時〜9時半は無料ですが、サポーター登録が必要です。サポーターは義務はなく、いつでも止めることができます。サポーター登録ページへ https://okseed.jp/supportus.html

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