アジアの農家の種子の権利を奪う日本政府

 種子法が廃止されたことに対してはようやく批判が集まるようになったが、一方で、日本政府はアジア各国政府から農民の種子の権利を奪う圧力をかけ続けている。こちらの方はほとんど注目されていないのではないか? 国内で権利が奪われると抗議するけど、国外で同じことを日本政府がやることはスルーしてしまうとなれば結局、このグローバリゼーションの時代、国内の権利だって守れはしないので、しっかりアジアの人びとといっしょにこの動きを止めなければならない。

 UPOV1991年条約とは農家の種子採りする権利を奪う国際条約。要は種子開発した企業の知的所有権を守る国際的な取り決めであり、この条約を批准した国はそうした保護品種の知的所有権を守る国内法を作る義務が課される。
 メキシコ、チリ、ペルーでモンサント法案が登場し、多くの農民や市民の反対で一度はその法案は退けられたのだけど、TPPは参加国にUPOV条約批准を義務付けている。TPPが発効すれば参加国すべてに再びモンサント法案がやってくる。
 自家採種が禁止されるのは新品種だけで、伝統的品種の自家採種までが禁止されるというわけではないが、伝統的品種を流通できなくしてしまうことで実質的に自家採種を禁止できてしまう。大きな問題を持つ国際条約だが、日本はこのUPOV条約を1998年にすでに批准している。国内では表向き自家採種はOKといいながら、だんだんと自家採種できない品種が増やされ、2004年には原則自家採種禁止の方向が打ち出され、今年5月には種苗法を改訂して自家採種を禁止するという報道も出ている。

 一部の企業が知的所有権で儲け、世界の農家がその種子の権利が奪われるそうした知財立国路線を日本の市民社会が批判しなければ変えることは困難だ。種子を独占してしまえば社会だけでなく、生態系にも大きな影響を与える結果になるだろう。

 8月1日、フィリピンで行われた東アジア植物品種保護フォーラムにおいて、東南アジア諸国を含む全ての国が植物新品種保護国際同盟(UPOV)に加盟することを目指す共通方針を定めた「10年戦略」が採択、それを推しているのは他ならない日本政府。
 インドネシアではUPOV1991年条約には加盟していないが日本との2国間自由貿易協定によって実質上、インドネシアの種苗法が変えられてしまい、ほぼUPOVと同様の国内法が成立してしまっているという。

農水省:「東アジア植物品種保護フォーラム」における10年戦略の採択について

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