種苗法がどんな影響を与えるか? まさに地方のあり方そのものに影響を与えると考える。そもそも地方自治体が育成し、提供する種苗はその地域での農業振興のために行われたものであり、優良な種苗が比較的安価で提供されてきた。その種苗で農家がその地域で営農を続けられれば、地域の関連産業含め、地域の収入が確保できて、その自治体も税収を得て、すべてが回っていくことができる。
しかし、種苗法改悪案では自家採種が禁止とされ、自治体の種苗事業もその種苗事業そのもので採算取ることが求められていくようになっていくだろう。そして民間企業(多国籍企業)と同じ条件で競争することが求められていく。そればかりか地方自治体が持っている種苗の育成のノウハウは民間企業に提供することが法律で定められている(農業競争力強化支援法)。
こうして、種苗の育成費用は農家に押しつけられる。負担に耐えきれず離農が増え、耕作放棄地が増え、地域の税収は減るだろう。一部は企業農園になるだろうが、儲からなければすぐに出て行き、地域の発展にはつながらない。地域の種苗会社は種苗を買ってくれる地域の農家がいなくなれば存続が危うくなるだろう。地域の種苗が危なくなる。
地域の種苗は減り、グローバルに流通する品種、多国籍企業に特許・知的所有権で独占された品種に代替されていく。地域の食文化を支えていた食材が消え、食文化も衰えてしまう。
そもそも種子・苗とは農家のものであり、人びとの共有財産としてあった。それは人びとの食、つまり生きることの根本になければならないことである。こうした権利に基づく公共政策を打ち立てることが必要だろう。今後の地域を守るために、地域の種苗と農業・消費者を守る条例、政策の実現が不可欠。農村地域だけではない。都市は今後、どのような食の政策を立てるかが問われる。輸入に依存するのであれば健康被害、いざという時の食料難のリスクを負うことになる。都市農業を強化し、都市農業で足りない部分は農村地域の自治体との提携に進むことが必要になる。だから都市、農村に関わらず、この公共政策は不可欠ということになる。